理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-05
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ポスター発表
高齢循環器疾患患者において食欲不振の有無は運動機能に影響を与えるか
花田 智上田 美香湯地 忠彦東 祐二藤元 登四郎
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抄録
【はじめに、目的】循環器疾患の疾病・再発予防において,運動ならびに栄養管理はそれぞれが一翼を担っている.運動実施による運動機能の効果判定は多数の報告がなされているものの,栄養面を考慮した運動機能の報告は少ない.Landiらは,80歳以上の地域高齢者において,食欲不振がある対象者は身体能力,筋力ともに低下していたことを報告した.しかし,この報告は対象が80歳以上の後期高齢者で,かつ多数の疾患により構成されていた.循環器疾患で考えるとき,疾患特性から易疲労性や骨格筋の変化により運動機能が低下することは想像できる.しかし,それが食欲不振の有無により差が生じるのか否かを検討することは,今後運動機能低下防止において重要なチェック項目の1つになりうるのではないか.そこで,本研究では65歳以上の循環器疾患高齢者を対象に,食欲不振の有無に焦点を当てて,運動機能を検討することを目的とした.【方法】発症,もしくは術後2週間以上経過した心大血管リハビリテーション対象入院患者で,自己による立ち上がり,ならびに歩行が自立レベルにある者を対象として列挙した.その中から,明らかな運動器疾患,脳血管障害,しびれなどの神経症状を合併する者を除外した12例(男性5例,年齢79.8±7歳,疾患内訳:冠動脈バイパス術後4例,弁膜症術後2例,虚血性心疾患1例,心不全5例)を最終的な対象者とした.食欲不振の定義は,MNA-SF(Mini Nutrition Assessment Short-form)の聴取方法に基づき,まず第1に「過去3ヶ月の食事量が減少したか否か」を問い,「減少した」と答えた方に対して,次に「食欲低下の有無」を聴取し,「ある」と答えた方とした.運動機能の指標としてバランステスト,4m歩行テスト、椅子からの5回立ち座りテストの3項目で構成されるSPPB(Short Physical Performance Battery),握力,両側の等尺性膝伸展筋力の和を体重で除した等尺性膝伸展筋力,歩行速度を採用した.また身体組成として身長,体重,BMI(Body Mass Index), 上腕周径,下腿周径を測定し,その他栄養状態としてMNA-SFを聴取した.統計学的処理は、食欲不振の有無の2群比較をMann-Whitney検定を,食欲不振の男女比においてはχ²乗検定を使用して行った.統計にはSPSS Statistics 18を使用し,危険率5%未満を有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,当院倫理委員会の承認を得た.対象者へは書面・口頭にて研究の説明を行い,署名を頂くことで参加同意の確認を行った.【結果】食欲低下の有無はそれぞれ6名ずつであった.食欲不振無し群の方が食欲不振群と比べて,SPPB (10.1 ± 2.4 vs 5.8 ± 2.2点:P=0.012),握力(23.4 ± 7.8 vs 12.9 ± 7.2kg:P=0.037),等尺性膝伸展筋力(0.78 ± 0.20 vs 0.35 ± 0.11kgf/kg:P=0.004),歩行速度(1.06 ± 0.3 vs 0.64 ± 0.2m/s:P=0.025)と運動機能指標の全項目において有意に高値を示した.しかし,年齢,身体組成の各項目,MNA,そして男女差においては,全指標とも有意差を認めなかった.【考察】本研究の結果,食欲不振無し群は先行研究における測定項目,ならびに本研究において新たに採用した等尺性膝伸展筋力を含むすべての運動機能において有意に高値を示した.これは,先行研究と同様の結果であり,65歳以上の循環器疾患患者においても食欲不振の有無が運動機能指標の結果に影響を与える事が示唆された.等尺性膝伸展筋力は,立ち上がりや歩行能力と相関関係を認める報告も有り,本研究においても食欲不振群が等尺性膝伸展筋力において食欲不振無し群より低値を示したことが,SPPBや歩行速度の低下に繋がっていると考える.食欲低下は,循環器疾患症状の労作性呼吸困難や易疲労性を伴う運動耐容能の低下の疾患背景によるものや,入院による環境変化など,様々な因子によって生じる.今回も,これらの因子によって生じた食欲不振が結果的に運動機能指標の低下を招いたものと考える.今後は,疾患別に対象者を増やし更なる検討を重ねていくことが課題である.【理学療法学研究としての意義】食欲不振は,その先に筋肉量低下,転倒・骨折を招く「栄養負のスパイラル」の導入部分にあたる指標である.循環器疾患患者は易疲労性を生じやすいが,「食欲不振」の有無を確認していく事で,患者の更なる運動機能低下を予防する事が期待される.よって,本研究を理学療法分野として実施・継続する意義はあると判断する.
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© 2013 日本理学療法士協会
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