理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-17
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ポスター発表
スロートレーニングによる骨格筋特性の即時変化
運動速度および収縮様式によって筋力トレーニング時のメカニカルストレスに違いはあるのか?
小林 拓也中村 雅俊武野 陽平梅垣 雄心池添 冬芽
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抄録
【はじめに、目的】 運動速度をゆっくりとする筋力トレーニング法であるスロートレーニング(以下ST)は比較的低負荷を用いながらも持続的な筋収縮を行うことで,高負荷で行う通常速度での筋力トレーニング(以下NT)と同等の筋力・筋量の増加が期待できると報告されている.しかし,これらの先行研究は反復回数を統一した条件下でSTとNTを比較しており,総トレーニング時間を統一して比較した報告はみられない.また,一般的にNTでは求心性収縮トレーニングに比べて遠心性収縮トレーニングの方が筋力増強効果は高いとされているが,STにおいて求心性収縮と遠心性収縮の割合を変化させて比較した報告はみられない.そこで,本研究の目的は健常若年男性を対象に,総トレーニング時間を統一した条件下で筋力トレーニングによる骨格筋特性の即時変化を調べ,運動速度(STとNT)および収縮様式(求心性収縮と遠心性収縮の割合)の違いが骨格筋のメカニカルストレスに及ぼす影響を明らかにすることとした.【方法】 上肢に整形外科的疾患の既往を有さない健常男性36名(年齢22.7±3.1歳,身長172.1±5.6cm,体重64.1±7.3kg)を対象とした.対象筋は利き腕側の上腕二頭筋とし,測定課題は肘関節を屈曲20°から120°まで屈曲し(求心相),再び屈曲20°まで伸展させる(遠心相)動作とした.対象者を無作為に求心相と遠心相の時間が同じST(NST群: 求心相5秒,遠心相5秒),求心相が長いST(CST群: 求心相7秒,遠心相3秒),遠心相の長いST(EST群: 求心相3秒,遠心相7秒),求心相と遠心相の時間が同じNT(NT群: 求心相1秒,1秒静止,遠心相1秒,1秒静止)の4群に分類した.最大筋力の20%の重錘を把持して肘関節屈伸運動をSTでは10回×3セット,NTでは25回×3セット行い,いずれの群も総運動時間は計300秒に統一した.トレーニング時は表面筋電図(Noraxon社製テレマイオ2400)を用いて上腕二頭筋の筋活動を測定した.筋力トレーニングによる上腕二頭筋へのメカニカルストレスの指標として,筋力,筋厚,筋輝度を測定した.筋力の測定には徒手筋力計(酒井医療社製モービィ)を用いて,肘関節90°屈曲位での最大等尺性筋力を2回測定し,平均値をデータとして採用した.また,超音波診断装置(GE横河メディカル社製LOGIQe)を用いて,安静背臥位での上腕二頭筋の筋厚および筋輝度を測定した.なお,筋厚の増加は筋線維がメカニカルストレスを受けて微細損傷を起こし,腫脹している状態を表している.また筋輝度の増加(高エコー)はメカニカルストレスによる筋の炎症状態を反映している.筋力,筋厚,筋輝度について各群のトレーニング前後の比較に対応のあるt検定を用いた.また,トレーニング前後の変化率およびトレーニング中の上腕二頭筋の総筋活動量積分値(筋活動量積分値の合計)の群間比較にはSteel-Dwass法による多重比較を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 すべての対象者に研究の十分な説明を行い,同意を得た.【結果】 すべての群においてトレーニング直後に筋力は有意に低下,筋厚および筋輝度は有意に増加した.トレーニング前後での変化率は筋力がNST群-14.1±14.2%,CST群-14.6±8.4%,EST群-14.4±9.5%,NT群-13.5±4.3%,筋厚はNST群11.7±6.0%,CST群10.5±8.5%,EST群5.6±7.0%,NT群12.4±10.5%,筋輝度はNST群23.1±22.5%,CST群17.6±14.5%,EST群13.9±9.6%,NT群9.7±8.1%であり,いずれの項目も4群間に有意差は認められなかった.また,トレーニング時の総筋活動量積分値も4群間で有意差は認められなかった.【考察】 本研究の結果,すべての群でトレーニング直後に筋力は低下し,筋厚,筋輝度は増加した.これらはトレーニングにより筋がメカニカルストレスを受けたことによる即時変化であると考えられた.また,筋力,筋厚,筋輝度の変化率はいずれも4群間で有意差は認められなかった.トレーニング時の総筋活動量積分値は群間差がなかったことから,総トレーニング時間や総筋活動量が同じであれば動作速度や収縮様式による違いはない,すなわちスロートレーニングにしても,あるいは遠心性収縮の割合を多くしても,骨格筋に対するメカニカルストレスに違いはみられないことが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 筋力トレーニングによる骨格筋特性の即時変化,すなわち骨格筋に対するメカニカルストレスは,運動速度や収縮様式よりも,むしろトレーニングの総時間や総筋活動量が影響していることが推測された.本研究結果は筋力増強を目的とした運動療法を確立するうえでの一助となると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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