理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-13
会議情報

ポスター発表
三次元動作解析を用いた歩行速度の違いが歩行速度に及ぼす影響
荻原 佑輔池田 聖夏城下 貴司
著者情報
キーワード: 歩行速度, 歩行率, 身体重心
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】 歩行の立脚期には3つのロッカーファンクションが働いている.ヒールロッカー(以下HR)は歩行周期の0-12%,アンクルロッカー(以下AR)は歩行周期の13-30%,フォアフットロッカー(以下FFR)は歩行周期の31-45%と報告している(ペリー,2007).しかし,この報告では歩行速度の影響について言及されていない.本研究は歩行速度がAR,FFRに与える影響を運動学的に明らかにすることを目的とした.【方法】 対象者は,現在および過去に著名な整形外科的疾患または神経学的疾患の既往のない健常成人14名(男性8名,女性6名),平均年齢21.4±0.5歳,身長167.1±8.8cm,体重61.9±8.8kgであった.機材は三次元動作解析装置システム(VICON MX),カメラ6台,床反力計3枚(AMTI),メトロノーム,解析ソフトはNexus1.7を用いた.パラメータはAR・FFRの足関節背屈モーメント変化率(以下ARm,FFRm〔%〕),歩行周期の30%・45%での矢状面上の足関節軸から床に下ろした身体重心線の最短距離(以下30%LA,45%LA〔mm〕),歩行周期のうち身体重心が足・膝関節軸を通過する時期(以下AG,KG〔%〕)を比較・検討した.解析方法は35個の反射マーカーを被験者の身体の各部位に貼付し,サンプリング周波数は100Hzとした.実験条件は安楽歩行(以下normal),40steps/min歩行(以下slow), 160steps/min歩行(以下fast)とした.被験者には肉眼的に自然な歩容が得られるよう各条件下での歩行を十分に練習してもらった上で,測定を行った.踏み込み足の指定は行わなかった.統計ソフトはIBM SPSS 20を用い,統計処理は一元配置分散分析の後,多重比較法(Dunnett法)を行った(有意水準5%未満).【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に対し研究の目的,実験方法,参加による利益と不利益,被験者自らの意志で参加し,いつでも参加を中止できること等を記した書面と口頭による説明を十分に行い,実験参加に同意していただいた場合は同意書を得た.データを記録した紙やUSB ,PC画面上には実験に関わった人のみ本人の氏名が分かるようにIDで管理した.個人情報を外部に持ち出す際には必ずUSBで持ち出し,さらにセキュリティをかけるようにした.万が一被験者に何かに異常が認められた場合を想定し,最寄りの病院に迅速に搬送できるような手配をしておいた.【結果】 slowのARm(51.0±11.0%)がnormalのARm(41.7±11.4%)と比較して有意に高値であり,slowのFFRm(49.0±11.0%)がnormalのFFRm(58.3±11.4%)と比較して有意に低値を示した(p<0.05).30%LAではslow(100.6±18.1mm)がnormal(113.8±16.3mm)と比較して有意に短く(p<0.05),fast(137.2±18.4mm)がnormal (113.8±16.3mm)と比較して有意に長かった,45%LAではslow(238.0±18.6mm)がnormal(299.6±21.3mm)と比較して有意に短く,fast(330.9±24.8mm)がnormal(299.6±21.3mm)と比較して有意に長かった(p<0.01).AGではslow(20.2±2.0%)がnormal(21.5±1.2%)と比較して有意に短く(p<0.05) ,同様にfast(20.3±1.3%)がnormal(21.5±1.2%)と比較して有意に短かった(p<0.05). KGではnormal(25.4±2.2%),slow(24.4±4.3%) ,fast(25.8±2.0%)となり,有意差は認められなかった.【考察】 本研究の結果から,歩行速度はモーメント発生要因の質を変化させる可能性が示唆された.slowはARm優位の歩行であった,30%LAは短いがARmは増加した,すなわち重心移動よりも力の成分の関与が考えられる.fastは有意差がなかったが,FFRm優位傾向の歩行であった,45%LAは長かった,すなわち力の成分よりも重心移動の関与が示唆される.言いかえればslowはARに制動力としてモーメントを発生していることが考えられる.fastはFFRに45%LAを確保することによりモーメントを発生していると示唆される.【理学療法学研究としての意義】 今回の研究では,ロッカーファンクションと歩行速度の関係性について着目し,新たな見解が得られると我々は考えた.今回の研究により遅い歩行はARを誘導し,早い歩行はFFRを誘導する可能性を示唆した.

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top