理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-S-03
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セレクション口述発表
鏡視下腱板修復患者の術後3か月における短期成績
- 断裂サイズごとの疼痛,自動可動域,DASHの変化‐
工藤 篤志山崎 肇佐藤 史子及川 直樹榊 善成山内 真吾高橋 由希成田 和真岡村 健司
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キーワード: 腱板断裂サイズ, 疼痛, DASH
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抄録

【はじめに,目的】 当院リハビリテーション科では鏡視下腱板修復術(以下ARCR)を行う患者に対し,術前における患者の状態把握のため,理学療法評価(可動域・筋力・疼痛・Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand(以下DASH)など)を実施している.また,回復状態の把握の一助として,同様の理学療法評価を術後定期的に実施している. 我々は術後3か月においても断裂サイズが肩甲骨面挙上筋力と外旋筋力に関連することを明らかにし,外旋,内旋,肩甲骨面挙上の各筋力が術後3か月において術前よりも改善が認められることを報告した.そこで今回は術後における疼痛,肩関節自動可動域およびDASHについて断裂サイズごとに検討し,術後3か月における短期成績について調査した.【方法】 対象は平成22年4月~平成24年10月の間に当院にてARCRを実施した患者のうち,術前と術後3か月の評価項目をすべて満たした193人(性別:男性102人,女性91人.手術時平均年齢: 63.7±8.5歳.利き手:右189人,左4人)193肩(術側:右136人,左57人)とした.両側肩腱板断裂や関節リウマチ合併例などは除外した.断裂サイズは1cm未満を小断裂,1cm以上~3cm未満を中断裂,3cm以上~5cm未満を大断裂,5cm以上もしくは二腱以上の断裂を広範囲断裂とした.断裂サイズは手術記録から確認した.小断裂は63人(男性29人.女性34人.62.2±8.6歳),中断裂は87人(男性53人,女性35人.64.4±8.9歳),大断裂は24人(男性10人,女性14人.63.3±7.0歳),広範囲断裂は16人(男性8人,女性8人.66.9±7.6歳)であった. 評価項目は1.疼痛(安静時,運動時,夜間時)をVisual Analogue Scaleを用いて測定した.2.肩関節自動可動域(屈曲,外転)を端座位にてゴニオメーターを用いて測定した.3.DASH(自己記入式質問票)の機能障害/症状についてのスコア(以下DASHスコア)を測定した. 比較検討には疼痛,肩関節自動可動域,DASHスコアを断裂サイズ(小断裂,中断裂,大断裂,広範囲断裂)と評価時期(術前,術後3 ヵ月)を要因としたFriedman検定を用いた.多重比較検定はSteel-Dwass法を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮,説明と同意】 事前に評価内容等の使用に対する説明を十分に行った上で,同意が得られた患者を対象とした.【結果】 Friedman検定では疼痛,自動可動域,DASHスコアすべての項目で断裂サイズおよび評価時期に有意な差がみられた. 多重比較検定では安静時痛において術後は術前と比較して小断裂(p<0.01),中断裂(p<0.05)で有意に低値を示した.同様に運動時痛において術後は術前と比較して小断裂と中断裂(p<0.01),大断裂(p<0.05)で有意に低値を示した.夜間時痛において術後は術前と比較して小断裂と中断裂(p<0.01)で有意に低値を示した. 【考察】 今回の結果からARCR術後3か月において疼痛,自動可動域,DASHスコアが術前よりも改善することが明らかとなった.小断裂と中断裂では3項目すべての疼痛が術前より有意に低下しており,術後3か月に高い疼痛改善効果が得られることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 術前説明や術後の経過説明を患者に行う際,断裂サイズに応じた予後予測の参考になると考える.

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© 2013 日本理学療法士協会
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