理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-10
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一般口述発表
立ち上がりテストはACL再建術後の機能回復を反映できるか?
小山 泰宏掘 大輔染川 晋作山崎 祐山崎 春香松下 悦子尾上 裕樹前田 朗
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抄録
【はじめに、目的】前十字靱帯再建術(以下ACL再建術)後の機能回復やスポーツ復帰の基準は、等速性筋力評価による体重比や健患比が用いられることが多い。しかし高価かつ評価時間を要する等速性筋力評価機器による測定は、臨床においては運用が困難となる施設も少なくない。近年、体重支持指数(以下WBI)(黄川,1991)と立ち上がりテストとの間に高い負の相関があるとの報告(山本ら,2002)から、等速性筋力評価機器による筋力測定以外にも利便性が高い立ち上がりテストが様々な下肢疾患における一評価として有効と考えられる。本研究の目的は、立ち上がりテストがACL再建術後の機能回復を反映するか調べ、従来から用いられている等速性筋力評価によるトルク値や大腿周径との関係について検討することである。【方法】2011年4月~2012年10月までに当院にてACL再建術(除外項目:複合靭帯損傷、術後4カ月以内に追跡不能になった例)を施行し、演者が担当した9名(男性3名、女性6名、手術時平均年齢22.4±9.4歳、平均身長164.9±7.4cm、平均体重60.3±4.4kg)を対象とした。術後測定期間は、4,5,6,7,8,9,10,11,12ヵ月とした。方法は、健側、患側ともに等速性筋力測定機器CYBEX®2(Lumex社製)による0,60,180deg/secでの膝関節伸展、屈曲トルク値、大腿周径(膝蓋骨直上、5,10,15cm)の測定と片脚起立動作による立ち上がりテスト(山本ら,2002)(Single Leg Standing‐test以下SLS-T)を行った。データ解析は、9名の反復測定にて測定可能であった44回のデータを元に、得られたトルク値についてWBI(0,60,180deg/sec)、60,180deg/secの健患比とH/Q比を算出した。統計学的処理は、患側データを用い、1)目的変数:SLS‐T、説明変数:術後測定期間、WBI、60,180deg/sec健患比、60,180deg/sec H/Q比、大腿周径、下腿長、身長、体重。2)目的変数:術後測定期間、説明変数:SLS-T、WBI、60,180deg/sec健患比、60,180deg/sec H/Q比、大腿周径の検討をした。1)、2)の回帰式を求めるため重回帰分析(ステップワイズ 変数増減法)を行った。(統計ソフト:R.2.8.1)【倫理的配慮、説明と同意】患者には、術前の段階で術後測定期間での機能評価の実施について十分に説明し了承を得て行った。また本研究は、術後の再断裂を予防するため、再建靭帯の脆弱時期とされる3ヵ月以内での評価、測定は避け、当院の倫理規定に基づく承認を得て施行された。【結果】得られた回帰式を以下に示す。1)SLS-T=-25.2[60deg/sec伸展健患比]-1.9[術後測定期間]-1.9[5cm周径]+33.0[60deg/sec屈曲健患比]-34.1[180deg/sec伸展WBI](回帰式:p<0.001、F値=44.4、説明変数:p<0.001、R²=0.85、R*2=0.83)2)術後測定期間=-0.2[SLS-T]-1.9[5cm周径]+7.18[180deg/sec屈曲健患比]+1.05[10cm周径]-6.61[180deg/sec屈曲WBI] (回帰式:p<0.001、F値=17.4、説明変数p<0.05、R²=0.696、R*2=0.66)【考察】SLS-Tは、1)2)の結果より術後測定期間に影響されること、等尺性筋力値である0deg/secによるトルク値よりも中速度である60,180deg/secのトルク値に関与すること、さらには内側広筋を主とした広筋群の筋量とされる大腿周径5cm、10cmと関係が高いことが予測された。このことからSLS-Tは、ACL再建術後の機能回復を反映しやすいと考える。しかし特に低い位置からのSLS-Tは、ACL損傷との関連が高いKnee-in姿勢になりやすいため、測定にあたっては十分に下肢アライメントに留意する必要がある。今後は、術後測定期間における横断的検討や年代間比較などについて症例数を重ね検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】SLS-Tは、ACL再建術後の機能回復の指標としても有効であり、簡便かつ安価である立ち上がりテストは様々な施設において評価が可能である。SLS-Tの有効性は、理学療法におけるEvidenceの確立、向上にとって臨床的意義は高いと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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