理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-S-01
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セレクション口述発表
臨床実習指導における承認とその影響に関する調査
-学生と指導者双方の捉え方-
浅野 信一
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抄録
【はじめに、目的】 昨今ビジネスの世界や子育てにおいて、ほめ方と叱り方がクローズアップされている。臨床実習教育においては、日本理学療法士協会発行の「臨床実習の手引き」(第5版)による実習指導者の役割の中でも承認(褒める)についての説明があるように、以前からその必要性は認識されている。内発的動機づけと外発的動機づけがバランス良く成り立つ事が実習成果向上の鍵であり、指導者がその点の理解と指導スキルを身につけることは実習を有意義にかつ大変であっても楽しく前向きに進めるために大切なことだと考える。本研究の目的は、外発的動機づけのひとつである指導上の承認と、強い口調等での指導(いわゆる叱ること)について当院の現状を学生・指導者双方から調査し検討することである。【方法】 対象は、平成24年4月から10月までに当院で実施した総合臨床実習の実習生11名(男性7名、女性4名、平均年齢22.1歳)および実習指導者(以下SVと略す)11名(男性5名、女性6名、全員経験年数6年以上)である。 調査方法は質問紙により、学生は実習最終週個々に、SVは期間中最後の学生が実習終了後全員同時期に実施した。調査項目は、学生側に実習期間中の承認を受けた機会(褒められ体験)と強い口調の注意や指導等(叱られ体験:以下負の承認機会とする)の有無と回数およびその時の主観、SV側には学生に対する行動(褒める・叱る)の有無とその時の学生の反応とした。関連項目として、学生に学校での承認経験や実習中の楽しかった事(自由記載)、SVには自分が受けた実習の承認経験、両者に実習の達成感を尋ねた。【倫理的配慮、説明と同意】 調査に当たっては、質問紙に目的と統計処理により個人の特定はされない旨を記載したうえで口頭説明と合わせて同意を得て実施した。【結果】 学生、SV全員からの回答を得た。承認機会の項目では、「実習中承認(褒められた・褒めた)機会あり」学生8名・SV10名。機会回数は、5回以上が学生4名、SV6名。学生に対しての質問で、「その時は率直にうれしかったか」「実習遂行意欲は増したか」はともに8名、100%。SVに対しての質問で、「承認後学生の遂行意欲向上を感じたか」SV6名、60%。負の承認機会では、「あり」が学生9名、82%。SV8名、73%。機会回数は、5回以上が学生4名、SV3名。学生への質問として「その時の気持ちに近いもの」は不安5名、怒り1名、虚しさ1名、恐怖2名。「その時自己否定感を感じた」は7名、78%であり、「それは今克服できている」は3名、43%であった。SVへの質問として、「その時の実習生の言動や表情から感じた状態」は不安1名、虚しさ3名、恐怖1名、悲しさ2名、特になし1名であった。実習の自己達成感(指導者としての自己達成感)をパーセントで表すという質問では、学生平均65.9%、SV平均62.6%であった。 個々の回答結果から部分的に項目を抽出すると、実習の自己達成感において、5回以上褒められた学生の自己達成感平均値は75%と全体の平均値より高かった。負の承認機会が5回以上の学生も71.3%と全体平均値を上回っていた。承認機会・負の承認機会ともに5回以上あったと回答した学生は2名であり、達成感は80%、75%と高いものであったが、2名とも「自己否定感があったが克服した」と回答している。一方、5回以上褒めたSVの達成感は60.7%と平均値を下回り、負の承認5回以上のSVも59.7%と下回っていた。SVが行った承認と負の承認機会において、5回以上褒めたと回答したSV6名に5回以上叱ったと回答した全3名が含まれていた。【考察】 今回の調査では、多くのSVが承認するということを取り入れて指導している事がわかった。また、承認を多くするSVは同時に負の承認もしている。学生は負の承認を受けても達成感が低いわけではなく、SVによる承認・負の承認の頻度がともに高い学生が、一時は不安や恐怖を感じ自己否定感も感じたが、それを克服することで高い達成感を得られたということは、実習生とSVの実習上の関わりを考える上で興味深い。ただし今回の研究では検証までに至っておらず、学生のパーソナリティや能力に留意した指導を、SV個人ではなく組織として多面的に考えながら慎重に進めて行くことが大切であると考える。 一般的に外発的動機づけとしての承認欲求を満たす事が、プラスの効果を生む事は明らかであり、内発的動機づけとともに指導の中で今後も有効に活用したい。逆に自己否定感を克服できないまま実習終了を迎える学生がいることに留意し、今回の結果を基に、有効な実習指導者の教育・研修を進めていきたい。【理学療法学研究としての意義】 卒前教育としての臨床実習教育成果は、受入れ施設とSVの能力で大きく左右される。今後のSV教育において、教育機関と協力し受入れ施設側が検証する事と指導能力開発意識を持つ事は非常に大切である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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