理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-25
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ポスター発表
介護保険住宅改修費支給制度の適正化に向けた取り組み~住宅改修後の追跡調査結果より~
遠近 高明平尾 美津子池本 恭子
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キーワード: 住宅改修, 追跡調査, 適正化
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抄録
【はじめに、目的】介護保険住宅改修(住改)費支給制度の適正化の観点より、住改後の追跡調査を実施し、住改費支給制度が利用者にとって真に有益なものに成り得ているか否かを検証することを目的とした。【方法】対象は平成21年度に箕面市において住改費支給申請のあった442名のうち、調査書が回収でき、追跡調査時に死亡、転居、入院、入所、担当介護支援専門員の変更により住改前後での比較が不可能であった方を除く277名(有効回答率62.7%)であり、平均年齢79.4±7.7歳、性別は男性92名、女性185名であった。調査方法は、住改費支給制度利用者の担当介護支援専門員、地域包括支援センター職員ならびに住改費申請理由書作成で関与した箕面市健康福祉部高齢福祉課理学療法士ならびに作業療法士に対して調査を依頼した。調査内容は住改前後の転倒状況、住改箇所の使用頻度、住改前後の外出頻度、住改に対する満足度などについて実施することとし、各担当者は住改費支給制度利用者宅を訪問もしくは電話により聞き取り調査を行った。なお、住改が完了してから追跡調査までの期間は528.9±102日であった。【倫理的配慮、説明と同意】担当介護支援専門員ならびに住改費支給制度利用者に対して趣旨を説明し、了解を得て且つ回答の得られた情報のみ集約した。また、本調査はヘルシンキ宣言を順守するとともに、得られた情報は箕面市個人情報保護条例に基づき、個人が特定される情報が外部に一切流出しないように、箕面市役所内部でセキュリティー管理のもと個人情報の取り扱いには十分に注意した。【結果】1.住改前後の転倒頻度:住改前の転倒頻度と住改後から再調査までの間の転倒頻度について、住改前後で頻繁に転倒、住改前までに2~3回転倒・住改後から調査までの間に2~3回転倒、住改前後で転倒無しの3段階に分類して調査した。結果、頻繁に転倒との回答は住改前55名が住改後16名に軽減しており、屋内外の生活空間の動線上の手すり設置箇所や段差解消箇所では、従来転倒し動作が不安定であったものが、動作が容易になり転倒しなくなったとのコメントが多かった。2.住改後の使用頻度:住改箇所数別(マンション・戸建て)と住改サービス利用者別(マンション・戸建て)で分類し、使用頻度は頻繁使用、時々使用、不使用の3段階に分類し調査した。住改の合計箇所数は953箇所(マンション215箇所、戸建て738箇所)であり、頻繁使用の回答は953箇所中839箇所(88.0%)、時々使用の回答は81箇所(8.5%)、不使用の回答は33箇所(3.5%)であった。住改サービス利用者別(総数277名)ごとの使用頻度では、頻繁使用の回答は216名(78.0%)、時々使用46名(16.6%)、不使用15名(5.4%)であった。3.住改前後の外出頻度:ほぼ毎日外出、週に数回外出、月に数回外出の3段階に分類して調査した。週に数回外出と返答した利用者数は変化なかったが、ほぼ毎日外出が81名から90名に増加し、月に数回の外出は54名から45名に減少していた。4.住改に対する満足度:満足、どちらでもない、不満足の3段階に分類し調査した。結果、サービス利用者のうち満足と回答があったものは277名中270名(97.5%)であり、どちらでもないと回答のあったものは277名中5名(1.8%)、不満足が277名中2件(0.7%)であった。【考察】住改箇所の使用頻度や転倒頻度などで良好な結果が得られたように、介護保険制度において住改費支給制度は、虚弱高齢者やその家族が、住み慣れた居住環境で安心して生活するために十分な役割を担っていると考えられた。今回、特に注目すべき点は、これまでに海外や国内での住改後の追跡調査によって住改箇所の使用を中断した人の比率は14~18%程度との報告が大半であるのに比して、箕面市においては住改箇所別で不使用の回答は3.5%、住改サービス利用者別でも不使用の回答は5.4%と非常に使用頻度が高い結果であった。これは、平成21年度の箕面市における住改支給制度利用者の約45%のかたに対して、理学療法士・作業療法士が専門的な立場で関わり、利用者本人・家族・担当介護支援専門員などと連携し、個々の状況に応じた住改のアドバイスを実施していることが一要因であると考える。我々、理学療法士は住改を単なる一改修工事と捉えることなく、身体的、精神的、社会的、職業的、経済的な面など幅広い視点を持ち、利用者・家族と最も近い位置で在宅生活に関われる存在として活動していくことが必要と考える。【理学療法学研究としての意義】住改とは、改修工事が完了すれば終了ではなく、使用状況、利便性、介護負担の軽減など、改修による改善度合いや改修による効果判定がさらに重要であり、追跡調査のように利用者のその後の状況に着目する視点や、個々の利用者に応じた住改に関する情報の蓄積が重要と考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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