抄録
【はじめに】近年、住み慣れた自宅で人生の最期をすごしたいと希望する終末期患者の増加を背景に、支援策としての地域サービスが注目されている。がん患者は病期の進行に伴い疼痛や倦怠感、さらには抑うつやせん妄などの精神症状が出現するため、状況に応じた医療・介護サービスが必要である。 今回、全身状態が悪化しながらも在宅での看取りを包括的に支援できた症例を経験したので、その症例を通して地域連携の重要性を再考したい。【対象及び方法】70代男性。嚥下時咽頭部痛により嚥下困難となり近医耳鼻科受診。咽頭がんと診断され、専門医療機関に放射線治療目的で2ヶ月入院。疼痛軽減及び経口摂取可能となり退院した。退院時、杖歩行レベルであり介護保険の通所系サービスを利用しながら自宅ですごしていた。約1年後、嚥下時咽頭部痛と全身倦怠感にて離床困難となったため専門医療機関を受診。頚部リンパ節転移と診断されたが、転移臓器の状況や全身状態より化学及び放射線療法の適応はないと判断された。本人家族の自宅で最期を迎えたいとの意向を尊重し、主治医の訪問診療及び訪問系サービスの開始となった。介入開始時、疼痛は日内変動を認めオピオイド系内服治療薬を服用。ベッドからトイレまでの歩行は介助にて可能、摂食はゼリー食や粥食を経口摂取できていた。障害高齢者の日常生活自立度B2、FIM64点。訪問リハは、摂食嚥下、呼吸機能維持及び、起居移動動作維持、疼痛緩和や家族への介護指導を目的に週3回介入した。【倫理的配慮】今回の発表にあたり、当院の倫理委員会での承認と家族の同意を得た。【結果】1ヶ月後、疼痛はさらに増強し、倦怠感と入眠傾向により離床時間が短縮していた。随時、主治医をはじめとするサービス提供事業者と同行訪問を行い、目標の変更やリスク管理、さらにはサービスの内容や頻度の検討を行った。必然的に臥床時間が延長するため訪問リハでは、がん性疼痛に加え不動による二次的疼痛の緩和や、褥瘡などの廃用症候群の予防を行った。体調が良好であれば本人の意向である経口摂取やADL拡大への関わりをサービス提供事業者と包括的に展開した。また、看取り時期に突入した家族への支援にも努めた。結果として臥床による廃用症候群を最小限にとどめることができ、体調が良い日にはポータブルトイレでの排泄が行え、さらに亡くなる2日前まで座位での経口摂取が実施できた。訪問リハ開始2ヵ月後、家族に見守られながら自宅で最期を迎えることができた。【考察】終末期がん患者に対して訪問リハを行った。各サービス提供事業者で、目標を統一し、刻一刻と変化する全身状態に対応した支援方法を検討し、ニーズの達成及び家族への看取り支援を包括的に行った。このことが、最期まで住み慣れた自宅でのその人らしい生活を支援することを可能とした。【理学療法学研究としての意義】訪問リハのニーズが多岐に渡る中で、今後増加すると考えられる終末期がん患者への関わりについて症例報告した。在宅での終末期医療において、訪問リハの参画及び地域連携の重要性について考える機会となれば幸いである。