理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-12
会議情報

一般口述発表
車いす委員会による整備点検を通じて発見された車いす要整備箇所の傾向と今後の対策
長崎 正義足立 晃一今田 健
著者情報
キーワード: 車いす, 整備点検, 対策
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】 当院は理学療法士3名,作業療法士3名,言語聴覚士2名で構成されている車いす委員会がある.当委員会では新規に導入する車いすの機種選定,購入手続き,導入後の使用法に関する勉強会,整備点検(以下,点検)を担っている.その中の点検は,平成22年4月から月2回の頻度で実施し,病棟で使用している全ての調整,修理を行い,安全に使用できるよう努めている.車いすの点検を実施してきた中で,要整備箇所に集約性があるのではないかと感じた.本調査の目的は,点検結果から不備があった箇所を記録,集計することでその傾向を把握し,本委員会としての今後の取り組みに活かすことである.【方法】 点検は本委員会委員が行い,平成22年4月から毎月2回実施している.集計期間は平成22年4月から平成24年3月までの全48回の点検記録から後方視的に調査した.調査項目は,点検した車いすの述べ台数,大車輪の車軸の緩み(以下,車軸),適正な空気圧(以下,空気圧),ハンドリムの緩み(以下,ハンドリム),ブレーキの効き具合(以下,ブレーキ),バックサポートの張り具合(以下,バックサポート),アームサポートの緩み,フットサポートの高さ,キャスターの緩み,その他の計9箇所における要整備件数の合計であった.また,上記箇所においてネジの緩みがその要因であると判断した場合にその件数を集計し,調査項目別の割合を算出した.機種特異性のある箇所の整備については集計後,除外項目として扱った.ネジの緩みによるパーツの位置や向きに左右差がある場合に要整備箇所とみなした.点検台数から各点検箇所における除外項目の件数を引き,各項目における整備件数の割合を算出した.R ver.2.15を使用して調査項目間における整備箇所の易発現性に対してカイ二乗検定を行った.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に従い,点検に関する調査は,使用者を含めたすべての関係者に説明を行い,同意を得たうえで実施した.点検において要整備を認めた箇所についての原因の説明を返却時に行い,同意を得た.点検および集計作業においては,使用者名を伏せて実施し,個人情報の保護に配慮した.【結果】 全48回の点検を実施した車いすの延べ台数は972台,882件であった.点検箇所別の整備件数と割合は車軸で73件(7.6%),空気圧115件(12.8%),ハンドリム62件(6.7%),ブレーキ79件(8.1%),バックサポート69件(8.1%),アームサポート50件(5.2%),フットサポート117件(18.3%),キャスター191件(18.1%),その他68件(2.6%)であった.カイ二乗検定は,空気圧,フットサポート,キャスターの3箇所において要整備件数が有意に多かった.ネジの緩みがその要因であると判断した割合は全体の約39.6%であった.【考察】 要整備の発生割合はフットサポート,キャスター,空気圧の順で多く認めた.フットサポートに関しては,調整箇所として高さの調整,向きの調整,ネジの緩み,スイングアウトのはまり込みなどその他の点検箇所と比較し,調整箇所が多いことが整備件数に影響している可能性がある.フットサポートの整備件数においてはネジの緩みに起因する件数が大半を占めており,点検を実施する際にネジの緩みを重点的に確認するよう啓蒙していくことが重要である.また,要整備になりやすい箇所では,点検の頻度だけではなく,部品そのものの同規格,同サイズへの交換を委員会内で検討,検証し取り組んでいくことが急務である.本調査から点検頻度の検討と部品交換の検討を対策として委員会に提案し,発生しやすい要整備件数の削減に努めたい.当院で院内スタッフを対象に毎週実施している研修会において,リハビリスタッフのみならず,院内スタッフ全体で要整備件数を削減できるよう啓蒙活動を実施していく.【理学療法学研究としての意義】 車いすにおいて要整備になりやすい箇所を認識し対策をたてて,安全な車いすの提供に努める活動は車いすの整備件数を削減させることに繋がり,車いすによる事故や駆動のしにくさを予防できるのではないかと考える.臨床において車いすに接する機会が多い理学療法士が使用者に安全な車いすを提供することは入院中のみならず,退院後の在宅生活をしていくうえでもQOLを大きく左右する要因であり,理学療法士だからこそ出来る生活支援の視点として重要である.

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top