理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-11
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ポスター発表
脳卒中患者における発症早期NIHSS下位項目と回復期病院退院時の転帰、機能帰結との関連性
井所 拓哉
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キーワード: 脳卒中, NIHSS, 帰結
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抄録
【はじめに、目的】近年、脳卒中発症早期からのリハビリテーション介入、急性期病院の在院日数短縮による早期での回復期病院への転院が進められている。その中で、早期からの機能帰結予測は退院計画や患者家族への情報提供、生活環境調整、社会的支援を検討する上で重要である。発症早期からの帰結予測として、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)を使用して、急性期病院退院時の転帰や機能帰結との関連について検討している報告が散見される。しかし、より長期的な帰結として回復期退院時の転帰や機能帰結との関連性についての報告は少なく、また下位項目による検討はない。そこで本研究では、NIHSS下位項目と回復期退院時の転帰および機能帰結との関連性について検討した。【方法】対象は2010年1月から2012年3月に当院に入院し、回復期病院へ転院となった脳卒中患者118例(平均年齢69.3(SD 11.8)歳、男性71例、女性47例、脳梗塞52例、脳出血66例)とした。取り込み基準は、入院3日以内のNIHSS評価および脳卒中地域連携パスによる回復期退院時のADL、退院先の後ろ向き調査が可能な者とした。除外基準は、くも膜下出血、テント下病変、回復期転院後に死亡または重篤な合併症によりリハビリ継続困難となった者とした。発症3日以内のNIHSSと回復期病院退院時のFunctional Independence Measure(FIM)、その他に属性因子として年齢、性別、脳卒中病型、麻痺側を調査した。 統計学的解析として、対象者を回復期病院からの退院先から自宅退院群、非自宅退院群に分けて、両群間におけるNIHSS下位項目およびFIM運動項目、認知項目をMann-Whitney検定を用いて比較した。次に、NIHSS下位項目とFIM運動項目、認知項目との関連性を検討するためにSpearman順位相関係数を求めた。さらに、FIM運動項目、認知項目をそれぞれ従属変数、NIHSS下位項目と属性因子を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。全ての統計学的解析の有意水準は、P = 0.05とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当院の臨床研究倫理委員会の承認を得て行った。地域連携パスデータの利用に際して、対象者またはその家族に説明を行い、署名にて同意を得ている。【結果】対象者のNIHSSスコアは平均11.4(SD 8.5)、回復期病院退院時FIM運動項目は平均67.3(SD 26.9)、認知項目は平均15.3(SD 9.2)、自宅退院群は83例(70.3%)であった。自宅退院群と非自宅退院群の比較の結果、自宅退院群は有意にFIM運動項目、認知項目の点数が高く、NIHSS下位項目の「意識水準」、「質問」、「注視」、「非麻痺側下肢運動」、「麻痺側下肢運動」、「言語」の点数が低かった(P < 0.05)。NIHSS下位項目とFIMの相関係数の絶対値は、FIM運動項目r = 0.048 – 0.358、FIM認知項目r = 0.041 – 0.528であった。重回帰分析の結果、FIM運動項目に寄与する有意な独立変数は、年齢とNIHSS下位項目の「質問」、「麻痺側下肢運動」であった(モデルR² = 0.388、P < 0.001)。FIM認知項目に寄与する有意な独立変数は、年齢とNIHSS下位項目の「質問」であった(モデルR² = 0.428、P < 0.001)。【考察】本研究結果から脳卒中発症早期のNIHSS下位項目は回復期退院時の転帰や機能帰結に有意に関連することが明らかとなり、中でも機能帰結には「麻痺側下肢運動」と「質問」が重要であることが示された。これはFIM運動項目において移乗や移動の難易度が比較的高いことから、それらには発症早期の下肢運動麻痺の重症度が強く影響していることが考えられた。また、見当識低下等の認知機能低下は回復期以降のADL獲得の阻害因子であることを示唆しており、両者は機能帰結予測に関連する先行研究と類似した結果であった。 重回帰分析の結果から、作成された予測モデルへの寄与率を表す決定係数は十分に高いとは言えず、予測精度には限界があることを示している。しかし、NIHSSは臥位での検査が可能であることから、安静度制限を受けやすい発症早期でも容易に使用可能なことを考慮するとその有用性は高いと考える。【理学療法学研究としての意義】脳卒中発症早期からのリハビリテーション介入や早期の回復期病院への転院が進められる中で、長期的な帰結を見据えて回復期へと繋げていくシームレスな介入の必要性がある。本研究結果から得られた発症早期からの帰結予測に関する知見はその一助となるものと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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