理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-01
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ポスター発表
臨床実習の満足度に影響する要因について
実習指導者との関わりに着目して
山口 泉和田 三幸藤井 菜穂子谷 浩明
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抄録
【はじめに】 臨床実習は,理学療法の体験と実践を通し,理学療法士の役割と責任について理解する貴重な経験の場である.しかし,臨床実習終了後,学生の実習に対する満足度は様々である.本研究では,臨床実習における満足度に影響する要因を明らかにするため,学生の視点・立場から臨床実習指導者との関わりに着目したアンケート調査書を作成し縦断的調査を行い,若干の知見を得たので報告する.【方法】 対象は,本学理学療法学科在籍の3年生60名.(男性33名,女性27名)で.2年次の年齢20.0±0.5歳であった.4年生は46名.(男性25名,女性21名),平均年齢21.6±0.9歳であった.アンケート調査は,3年生に対し,2年次における検査実習.(検査)及び3年次における評価実習.(評価),4年生に対し,4年次における総合臨床実習1回目.(総合1)及び2回目.(総合2)について実施した.2年次検査の実習期間は1週間,3年次評価で,3週間,4年次総合1及び2ともに各6週間であった.3年生に対する検査及び評価のアンケート調査では,検査前・検査後および評価後の計3回に渡り縦断的に調査を実施した.4年次総合に対するアンケート調査は,総合1の前後,総合2の前後の計4回に渡り同様に実施した.アンケート内容は,(1)基礎情報,(2)実習満足度,(3)実習に対する楽しみや不安の程度,.(4)レジュメ作成について,.(5)実習中に影響を受けた人,(6)実習指導者について,(7)実習に対する要望について,(8)卒業後の臨床に対する目標についてとした.回答形式は評定尺度法,2項選択法,順位法,自由記載方式を用い,個人の自由な意見を求めた.得られたデータは,実習満足度を「高い・普通・低い」の3段階に分類し,それぞれ臨床実習の満足度が高い群・普通群・低い群とした.このうち,高い群及び低い群について,設問について全体に対する割合を算出すると同時に,自由記載欄においてはコメントを拾い出した.【倫理的配慮、説明と同意】 全対象者には研究の趣旨・方法について事前に説明し,同意を得た上で無記名にて調査を行った,個人や実習施設を特定するような設問はなく、また情報の管理には十分留意した.【結果】 アンケート回収率は,検査で53.3%,評価で70.0%,総合1で,91.3%,総合2で93.4%であった.実習終了後の満足度により3分類し,実習満足度が高い群が全体に占める割合をみたところ,検査59.4%,評価66.7%,総合1で72.2%,総合2で76.7%であり,満足度が高い傾向にあった.高い群において,実習指導者と学生の関わりが強いと回答した割合は,評価64.3%,総合92.3%,総合2で72.7%であった.実習中に影響を受けた人として実習指導者と回答した学生は,検査94.7%,評価82.1%,総合1で76.9%,総合2で84.8%であった.学生が指導者に対して歩み寄る努力をしたと回答した割合は評価92.9%,総合1で100.0%,総合2で84.8%であった.自由記載より「実習前は不安でいっぱいだったが多くの知識を得ることができ楽しかった」「実習指導者は理学療法に対する指導が丁寧で学生が意見を伝えやすい」「もっと勉強したい.指導者の先生のようになりたい」などの前向きな意見が得られた.実習後の実習満足度が低い群において,全体に占める割合は,検査15.6%,評価21.4%,総合1で11.1%,総合2で14.0%であった.低い群で,実習指導者と学生の関わりが強いと回答した割合は,評価で22.2%,総合1で25.0%,総合2で16.7%であった.実習中に影響を受けた人として実習指導者と回答した学生は,検査100.0%,評価88.9%,総合1で25.0%,総合2で50.0%であった.学生が指導者に対して歩み寄る努力をしたと回答した割合は,評価77.8%,総合1で75.0%,総合2で50.0%であった.自由記載より「実習指導者と話す機会が少ないためコミュニケーションが図りづらい」「理学療法士になりたいという思いが薄れた」「これからが不安」などの意見が得られた.【考察】 縦断的に行った本調査より,実習指導者との関わりの程度が実習満足度に影響を及ぼしていることが示唆された.また,臨床実習を重ねても,必ずしも実習満足度が高まるわけではないことが分かった.臨床実習の過程で指導者が学生を理解し誘導する指導方針とともに学生の前向きな思考や姿勢により,実習満足度が高くなると示唆された.また,学生は指導者との関わりを求め,指導者からの指導が少ないと,不安と焦燥が現れる傾向にある.学生が歩み寄る努力をする或いはその意思があるにも関わらずうまく関われないことは,実習指導者とのコミュニケーション不良・満足度の低下につながると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 有意義な実習を行うためには,学生と実習指導者間の関わりの場が多く存在し,また,双方が積極的に歩み寄っていく姿勢が必要であり,それらによりお互いの満足度は高まると思われる.より有益な実習となるための要因について今後さらに詳細に検討を重ねたい.
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© 2013 日本理学療法士協会
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