理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-17
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一般口述発表
骨粗鬆症性椎体骨折に対する外固定治療法の検討
上原 徹青木 一治木村 新吾前野 圭吾大石 純子山田 翔太山田 寛木村 健一杉本 直樹佐藤 正隆小原 伊都子稲田 充
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抄録
【はじめに】当院では、骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fracture以下、OVF)に対する保存的治療として、背臥位吊り上げ位での体幹ギプス固定を行っている。一般には原田らや倉都らのアンケート調査にもあるように、軟性コルセットによる治療が多くを占めている。また、硬性装具と軟性コルセットで新鮮骨折例について検討した結果、両群で偽関節の発生率には有意な差を認めなかったという報告もある。そこで今回、X線とMRI撮像所見を用いて、外固定治療方法の違いや、固定期間によりOVFに対する影響についてretrospectiveに比較したので報告する。【対象と方法】H19年1月~H23年12月の間に、胸腰椎移行部のOVFで保存的治療を行い、6カ月以上経過観察可能であった73例(男性10例、女性63例)を対象とした。受傷時平均年齢76.6歳(62~89歳)であった。受傷椎体は、Th11:9例、Th12: 19例、L1: 25例、L2: 10例であった。外固定治療法は、体幹ギプス固定を8週間行った59例(以下、G8群)と、4週間の体幹ギプス固定を行った8例(以下、G4群)、および初期より硬性装具を装着した16例(以下、RO群)で比較した。G8群とG4群では、体幹ギプス除去後は12週間の硬性装具着用とし、その後軟性装具に変更した。RO群では、3カ月以上硬性装具を装用し、軟性装具へと変更した。X線評価は初診時、2カ月時、3カ月時、最終評価(6カ月)時の単純立位側面X線像から、椎体圧潰率の算出と局所後弯角の測定を行った。最終評価時における骨癒合の判定は、側面動態X線撮像により、椎体の前縁および後縁高に差のない状態、あるいはMRIのT1強調矢状断像で低信号域の消失により判定した。検討項目は、1.初診時から最終評価時までの椎体圧潰率の増加、2.受傷-2カ月、2-3カ月および3カ月-最終評価までの3期における椎体圧潰率、3.初診時から最終評価時までの局所後彎角の推移、4.骨癒合率とし、外固定治療法別に比較した。統計処理はMann Whitney U検定、およびカイ二乗検定を用い、有意水準5%未満を有意差ありとした。【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、当院の学術研究に関する方針ならびにプライバシーポリシーに則って行った。後方視的研究のため、個人情報を識別する情報を取り除き、症例は番号を付して匿名化して集計した。【結果】1.椎体圧潰率 受傷時に比べ全例で圧潰は進行しており、最終評価時の椎体圧潰率は16.4%であった。群別では、G8群13%、G4群17.5%、RO群30.6%であり、RO群ではG8群と比較し椎体の圧潰が有意に進行していた。2.椎体圧潰率の経時的変化 受傷-2カ月では、G8群6.8%、G4群13.3%、RO群18.9%と、RO群では2カ月内に椎体圧潰が有意に進行していた。2-3カ月においては、G8群2.8%、G4群13%、RO群では2カ月の段階で重度の圧潰を示しており、それ以上の進行は認めなかった。3カ月-最終評価においては、各群ともに変化はみられなかった。3.局所後彎角 全例において局所後彎角は増加しており、平均4.4°の増加を認めた。群別では、G8群3.5°、G4群5.6°、RO群7.8°と、RO群とG8群では、RO群が有意に後彎角の増加を認めた。4.骨癒合率 最終評価時に骨癒合が得られていたのは73例中62例(84.9%)であった。外固定法別ではG8群48例(90.6%)、G4群6例(75%)、RO群8例(66.7%)に骨癒合が得られ、RO群においてはギプス固定を行ったものと比較して、偽関節となる症例が多かった。【考察】全症例で受傷椎体の圧潰進行と局所後弯角の増加が認められ、諸家の報告と同様、外固定により圧潰および後彎変形の進行を抑制することは困難であった。川本らや井上らは2週間あるいは4週間の体幹ギプス固定は、3カ月間の硬性装具と比較した結果、圧潰の進行、後彎変形に差はなかったと報告している。本研究では、体幹ギプスによる強固な固定といえども、4週間では硬性装具より良好な結果であったが有意差はなく、8週間の体幹ギプス固定を行うことで、圧潰の進行を有意に抑制する結果となった。Chowらも8週間の反張位体幹ギプス固定は、後彎変形の進行は抑制できないが臨床成績は良好であると報告している。しかし、体幹ギプスによる固定は患者のコンプライアンスの面から問題も指摘されるところではある。しかし脊椎不良アライメントの進行や、手術的治療への移行を予防できることを考慮すれば、OVFの初期保存的療法として、体幹ギプス固定が推奨される。今後の課題としては、体幹ギプスと運動療法との併用により、装着期間の短縮を検討することである。【理学療法学研究としての意義】高齢社会においてOVFの発生率は増加の一途にある。しかし、適切な固定治療が行われず、脊柱変形の増加によりに障害を有するケースも少なくない。本研究により、運動器不安定症などの二次的障害を予防し、社会復帰への理学療法の円滑な遂行を可能にするものと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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