理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-13
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ポスター発表
足部第5列外反誘導によるRocker Functionの変化
足底板による足部第5列外反誘導がRocker Functionに与える影響
弦巻 徹山口 剛斎藤 昭彦岡本 栄行浅岡 良信岩井 実穂子中村 祐輔月城 美雪鈴木 智
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キーワード: WindlassMechanism, 足底板, 第5列
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抄録

【はじめに、目的】Windlass Mechanismを機能させて歩くためには、中足趾節関節の水平軸でForefoot Rockerが行われることが条件になると考えられるが、足部の列とRocker Functionの関係について報告した例は少ない。本研究の目的は、足部の第5列がRocker Functionに与える影響を明らかにすることである。足部の第5列を外反誘導した場合、足圧中心は内側に偏移し、Forefoot Rockerは水平軸で行われやすくなると考えられる。この結果、Windlass Mechanismが機能し、ストライドが延長することが予測された。実際の歩行を対象に、予測を確認することを最初の目的とした。次に、その予測が成立した場合、足部の第5列の外反角度に比例して、ストライドが延長するかどうか明らかにすることを、第2の目的とした。先行研究から、Mid Stance以降、足圧中心が前足部の外側から内側に移動することが報告されている。Sammarcoはモーメントアームの相違にてForefoot Rockerは中足趾節関節の斜軸が低速歩行、水平軸が高速歩行に適していると述べている。【方法】トレッドミル上を、裸足で歩く様子をデジタルカメラ(カシオ製EX-F1)で撮影した。歩行速度は、被験者が最も歩き易いと感じた速度(4.5km~6km)に設定し、実験中一定に保持させた。1秒を1200フレームに分割し、定常歩行の5歩について、歩行周期の平均値を算出した。対象は、下肢に既往のない男女10名。Forefoot Rockerに要する時間を分析するため、立脚相をInitial Contactから第1末節骨頭が床面に接地するまでと、第1末節骨頭が接地してから立脚期が終了するまでに区分、その時間変化も算出した。第5列外反誘導の方法は、足底板作成に使用するボロンを1mm毎に1mmから5mm第5中足骨底面に貼り付けて行った。歩行速度一定の場合、ストライドが延長すれば、歩行周期は増加し、ストライドが短縮すれば、歩行周期は減少することになる。統計学的解析はWilcoxonの符号順位検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、実験前に口頭と書面で本研究の目的、実験手順、考えうる危険性等を十分に説明し、内容について十分に理解を得た、その上で参加に同意したものは同意書に署名し実験に参加した。【結果】予測通り、足部の第5列外反誘導で歩行周期は増加、ストライドが延長することが認められた。また、第5列外反誘導が3mm以下では、歩行周期と第5列の外反角度が比例する有意差が認められ(p < 0.05)た。よりWindlass Mechanismが効く歩容に変化した。【考察】中足趾節関節の水平軸は第1趾と第2趾を通過する運動軸であるため、第5列は直接関与しているわけではない。しかし、本研究の結果、Forefoot Rockerが中足趾節関節の水平軸で行われるためには、第5趾外反誘導が有効であることが認められた。また、Forefoot Rockerが中足趾節関節の斜軸、あるいは水平軸で行われるかどうかを決定する要因の1つに、第5列を含む足部の横アーチが深く関与していると考えられる。【理学療法学研究としての意義】足底板療法は、下肢の疼痛軽減状態を一時的に維持し、運動療法を組み合わせることで歩行能力の改善を目的に、広く行われている。足底板が歩行に与える影響について、足圧中心や関節モーメントの報告はあるが、視覚的に判断可能で、臨床応用が容易な歩行周期の時間変化に関する研究は少ない。足部は床面と唯一接する関節であり、歩行において重要な働きを示すことは容易に推測される。今回の実験では足部第5列外反誘導がMP関節の運動軸を変化させることが示唆された。MTP関節の運動軸が斜軸から水平軸に足部第5列外反誘導に伴い変化するのであれば、ウィンドラス機構を効率的に働かせ、立脚期の時間を調整することが可能になるのではと考えられる。よって靴型装具作成時の一つの指標となると考える。

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© 2013 日本理学療法士協会
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