理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-12
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一般口述発表
Drop vertical jump課題における立脚時間の違いが膝関節運動に与える影響
宝満 健太郎山中 正紀
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キーワード: ACL損傷, 着地動作, 予防
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抄録

【はじめに、目的】前十字靱帯(以下,ACL)損傷を予見するスクリーニングツールとされる Drop vertical jump(以下,DVJ)は,前向き研究により着地時の膝外反運動(Dynamic knee valgus)を指標として広く臨床的に認知されている.数多くの研究がそのような動的アライメントの原因を神経筋コントロールの不良として結論づけている.事実,神経筋トレーニングの一つであるPlyometricな運動は着地動作における下肢筋前活動や膝関節モーメントを有意に変化させることが報告されている.DVJは単純な着地動作ではなく、着地後すぐに最大垂直跳びというPlyometricな連続動作で構成され,伸長-短縮サイクルを形成する.そのため運動を素早く切り替える必要性から単位時間当たりの関節運動を減少させ立脚時間を短縮することが要求される.しかし,この機能的要求が膝関節運動へもたらす変化は不明である.本研究の目的は,DVJ時の立脚時間の短縮が膝関節運動、特に外転運動に及ぼす影響を調査することである.【方法】健常大学生15名(男性9名,女性6名)を対象とし、下肢既往のないものとした.30cm台からのDVJを三次元動作解析装置(Cortex3.0,Motion Analysis社製)にてリアルキャプチャーし,着地時の指示を与えないPreferred条件を3試行、接地時間の短縮が定常状態となる3試行の計9試行をそれぞれ採取した.データ解析にはSIMM(Motion Analysis社製)を使用しスキンアーチファクトに配慮した膝詳細モデルを作成し適用した.統計学的検定はANOVAを用い,post hoc testはBonferroniを用いた(有意水準p<0.05)【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当大学院倫理委員会の承認を得て行った.対象には事前に口頭と書面で本研究の目的,実験手順,考えられる危険性などを説明し,その内容について十分に理解を得た.その上で参加に同意した者は同意書に署名し,実験を行った.【結果】立脚時間の短縮はPreferred条件より有意に短縮され、膝外転モーメントおよび内旋モーメントが上昇させた(p<0.05).また,膝外転角速度および内旋角速度も高値となった.下肢関節の変化量は有意に減少していた(p<0.01).【考察】立脚時間を短縮する要求に応じて下肢のStiffness を上昇させなければならない.Pollardらは膝屈曲角度が小さいものはより大きな膝外転角度およびモーメントを呈すというLigament Dominance theoryを提唱している.本実験結果もこれを支持し,立脚時間の短縮は膝関節前額面運動に影響を与えた.加えて,回旋運動も増加させ,これらの組み合わせはACLのin situ forceを高めることが示唆される.【理学療法学研究としての意義】ACL再建術後のプロトコールには,ジャンプ動作開始における明確なエビデンスは存在していない.本研究はその一端に寄与するとともに,着地時の立脚時間に焦点を当てた神経筋トレーニングがACL損傷予防への効果的な介入となる可能性を示している.

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© 2013 日本理学療法士協会
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