理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-24
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ポスター発表
人工膝関節全置換術後患者における両脚立位から片脚立位移行時の筋活動パターンについて
小林 巧山中 正紀神成 透堀内 秀人松井 直人角瀬 邦晃野陳 佳織大川 麻衣子武田 直樹
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抄録
【はじめに、目的】人工膝関節全置換術(以下、TKA)は重篤な変形性膝関節症(以下、膝OA)患者に対して疼痛除去と機能改善を目的として施行される。TKA術後の筋活動に関して、Stevens-Lapsleyら(2010)は大腿四頭筋と大腿二頭筋の筋活動量について測定し、膝伸展運動時の大腿二頭筋の筋活動量が増加することを報告している。これまで、TKA術後の筋活動量に関する報告は散見されるが、筋活動開始時間に関する報告は見当たらない。Saraら(2007)は足関節不安定症患者の筋活動開始時間について、傷害部位を代償するパターンが見られたことを報告しており、何らかの局所障害を有する患者は正常パターンとは異なった筋活動パターンを示すことが考えられる。本研究の目的は、両脚立位から片脚立位へ移行する姿勢制御課題を用いて、TKA患者の筋活動パターンについて検討することである。【方法】対象は聴覚障害ならびに平衡機能障害の既往が無い、TKA術後4週が経過した女性7名(平均年齢69.4歳、身長152.9cm、体重61.4kg)と対照群として健常若年女性7名(平均年齢22.4歳、身長157.7cm、体重52.5kg)とした。施行動作は、両上肢を対側に位置させた両脚立位を開始肢位とし、音刺激開始後すぐに下肢を挙上させ片脚立位となる動作とした。TKA患者は術側および非術側、対照群は利き足と対側の下肢について測定を実施した。筋活動開始時間の測定はNoraxon社製筋電計TELEMYO G2を使用し、導出筋は支持側の大殿筋、中殿筋、長内転筋、外側広筋、大腿二頭筋、前脛骨筋および外側腓腹筋とした。データはサンプリング周波数1500HzでA/D変換し、解析の際のバンドパスフィルターは10~500Hzとした。音刺激開始をtime0とし、音刺激開始直前の安静立位100msでの平均筋活動を基線とし、time0から基線より2SDの範囲を越えた最初の時間を筋活動開始時間と定義した。また、挙上側母趾と踵部にフットスイッチを取り付け、下肢挙上時間を測定した。統計学的分析として、TKA患者の術側、非術側および健常群の比較と各群における筋活動開始時間および下肢挙上時間の比較に二元配置分散分析を実施した。多重比較の調整としてBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には検査実施前に研究について十分な説明を行い、研究参加の同意ならびに結果の使用について了承を得た。【結果】TKA患者の術側、非術側および健常群の比較について、筋活動開始時間および下肢挙上時間に有意な差を認めなかった。各群における比較について、TKA患者の術側では下肢挙上時間(1.08±0.38s)と比較して、中殿筋(0.55±0.24s)、長内転筋(0.49±0.21s)、大腿二頭筋(0.50±0.21s)および前脛骨筋(0.43±0.32s)の筋活動開始時間が有意に早かった。非術側では下肢挙上時間(1.13±0.52s)と比較して、長内転筋(0.45±0.26s)および前脛骨筋(0.32±0.15s)の筋活動開始時間が有意に早かった。また、健常群では下肢挙上時間(1.04±0.15s)と比較して、長内転筋(0.52±0.24s)、外側広筋(0.54±0.34s)、大腿二頭筋(0.49±0.25s)および前脛骨筋(0.46±0.13s)の筋活動開始時間が有意に早かった。【考察】本研究結果から、両脚立位から片脚立位移行への姿勢制御課題において、TKA患者の術側、非術側および健常群で下肢挙上時間より筋活動開始時間が有意に早くなる筋に違いがあることが観察された。特に、健常群では下肢挙上に先行して外側広筋の筋活動が開始されるが、TKA患者では術側、非術側ともに下肢挙上時間と外側広筋の筋活動開始時間に差を認めなかった。西上ら(2007)は膝OA患者では歩行時の内側広筋の筋活動開始時間が遅れることを報告しており、TKA術後は大腿四頭筋機能を代償する正常とは異なった筋活動パターンを用いる可能性が示唆された。また、非術側については、診断名はついていないもののVASで平均2.4mmの疼痛を有していたことから、軽度膝OAの可能性があり、これらの影響が推察される。本研究で得られた片脚立位移行時の筋活動パターンの違いが姿勢安定性に影響を与える可能性も推察され、今後さらに詳細な検討が必要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】TKA術後の筋機能の障害については、筋力低下にのみ焦点が当てられている。しかしながら、筋力低下が著明でないにも関わらず、バランスや動作障害を有する患者は多い。本研究で用いた片脚立位移行動作において観察された筋活動パターンの違いがTKA術後の姿勢制御や歩行に影響することも予想され、本研究結果は臨床上、有用な知見である。今後、健常高齢者や膝OA患者との比較検討も加え、TKA術後の筋活動パターンをより明確にし、パフォーマンスに与える影響などについて更なる調査を進めたい。
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© 2013 日本理学療法士協会
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