理学療法学Supplement
Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1202
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介護保険施設への就職動機に関する意識調査 第2報
鈴木 敏和
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抄録

【目的】現在日本国では平均在院日数の短縮に伴い,退院後の管理を担う地域リハビリテーションが注目されるようになってきた。2011年4月に日本理学療法士協会が行った「日本理学療法士協会会員所属施設調査」では,介護保険施設所属会員は,医療施設所属会員の75%に対し,12%と非常に少なかった。日本理学療法士協会では,今後増加すると思われる多くの資格取得者の活躍の場として,地域リハビリテーション分野が注目されるようになったのだが,H24年度末に厚生労働省により行われた介護保険施設へのアンケート調査では,機能訓練指導員(理学療法士等)の確保が,非常に困難であるとの調査結果が出されており,理学療法士の介護保険施設への就職意欲の低さが伺える結果となっている。H24年,本研究者は介護保険施設への就職動機を調査するため,研究者の所属する法人内の介護保険施設所属理学療法士に対しアンケート調査を行い,要因分析を行った。結果は,“自分をスキルアップできる場所”として介護保険施設を選んだ要因が大きいことが明らかとなった。しかし,前回の調査は法人の特色に大きく作用された可能性が高く,介護保険施設への就職動機の要因分析には不確実性があった。今回,より広範囲の施設に協力をお願いし,再調査を行うことにより,再度介護保険施設への就職動機の分析を行った。【方法】介護保険施設に就職した理学療法士を対象に,アンケート調査を行った。対象には,新卒,中途採用を問わなかったが,経営者となる者と主な収入源が介護保険施設以外にある者は,対象外とした。公募及び回答は,研究者所属法人のホームページ上にて行い,所属施設情報,介護保険施設への就職動機を自由記載として回答をいただいた。但し所属情報に関しては,介護保険施設就職者としての同意を頂き,施設名の回答は自由意志とした。アンケート結果は,介護保険施設就職動機を計量テキスト分析ソフトKHcoder(Ver2.beta.29e)にて,計量テキスト分析を行い,10回以上出現するワードを就職要因に関する項目として判別した。但し,量の多さと動機の強さとの因果関係は証明されていないため,本調査では動機としての要因として,考えられるか否かを判断した。【倫理的配慮】本調査研究は,医療法人社団新和会倫理委員会の定める倫理規定に則り,同倫理委員会より承認を受け,対象者には書面をもって説明し,署名にて同意を得た。また説明を必要とする者には,相談窓口を設置し対応した。【結果】介護保険施設就職者のアンケート回答者は46名(有効回答率93%)であった。所属施設数は自由回答であり,不明となっている。介護保険施設就職動機を計量分析した結果,要因ワードは“地域リハビリテーション”“地域医療”“退院後”等「地域リハビリテーションに関する要因」,“産休”“休暇・休日”“勤務時間”等の「福利厚生に関する要因」,そして「中間ワード」の3つに大別された。また,個別の分析ワードは,中間ワードと,どちらか一方の要因に全て含まれていた。【考察】今回の調査では,前回の調査で就職動機要因としてあげた「スキルアップ」とは異なる結果となった。前回は法人の特色が顕著に出た結果で,今回の調査が広範囲の施設を対象にした事により,介護保険施設全体の標準データに近づいたと考えられる。今回の調査結果は,非常に綺麗に二分された。更に,両方の要因を含む回答者が無かった事は,どちらか一方に偏った動機で就職先を決定していると考えられた。一方は,退院後の地域リハビリテーションの必要性を感じ,自分が携わりたいと思う要因。もう一方は,福利厚生面が就職するにあたり自分の希望に即しているという点が要因にあげられた。今後,介護保険施設への就職動機を高める為には,地域リハビリテーションの必要性のアピールと福利厚生面の充実が効果的と考えられる。今回の調査では明らかにできないが,調査結果は,年齢(経験年数),性別の要因も関与していると考えられ,今後必要に応じては,この要素を含めた調査も必要となる可能性も示唆された。【研究意義】今回,調査範囲を広げた事により,より標準的な結果を得る事ができたと考えている。今回得られた結果を,有効にアピール,活用する事により,機能訓練指導員が不足していると言われる介護保険施設への就職促進効果を期待していきたい。

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© 2014 公益社団法人 日本理学療法士協会
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