理学療法学Supplement
Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1567
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廃用症候群予防に向けたチーム医療の課題と問題点
横山 浩康高野 利彦
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抄録

【はじめに,目的】平成26年の診療報酬改訂を控え臨床では,チーム医療および病棟でのADL向上による廃用症候群の予防が焦点となっている。当院は地域の中核医療を担う2次救急指定病院であり,DPC対象病院および7対1看護基準を有している。したがって,円滑な治療・自宅および後方支援施設への円滑な展開を行うべく,地域医療における当院の役割を果たさなければならない現状である。このような現状の中では,患者の適切な退院を支援すべく,早期から全職種が一丸となったADLの向上・廃用症候群の予防がなさければならない。しかし,廃用症候群の予防には離床への援助が不可欠であるが,病棟では複雑化する病態および様々な患者背景により,ADLの向上に難渋する場合があり,結果として,廃用症候群に罹患する患者が少なくない状況である。更に当院では,7対1看護基準取得により看護師の急速な増加および新病院開院による病棟編成を経験し,病棟風土の変化や新卒看護師の増加により,患者の離床に難渋する事が多い状況であった。そこで当院では平成25年8月より,看護部とリハビリテーション科を中心に「離床チーム」を編成し,チーム医療としての離床への取り組みを開始した。離床チームのメンバーは,看護部長・各部所の看護科長・退院支援担当看護師・リハビリテーション科全スタッフ・NST専従管理栄養士・薬剤師である。離床チームの活動内容は,病棟ごとにラウンド日を指定し,離床への援助が必要な患者を抽出している。ラウンドにより援助が必要とされた患者に対しては,その後,離床目標およびケア方法を病棟看護師主体で設定を行っている。その内容としては,リハビリテーション科スタッフとカンファレンスのもと,離床プログラム・ケア方法を設定し,スケジュールに組み込みADLの向上を目指す形となっている。以下に当院で実践している離床チームでの活動内容より,問題点と課題について対応した事例の報告を行う。【倫理的配慮】倫理委員会承認の上,報告を行う。【問題点と対応方法】問題点の対応には,離床チームの中核となる看護科長2名・退院支援担当看護師・理学療法士が中心となり,問題となる事例を各部門に持ち帰り,現場スタッフからの意見を収集した上で,再度会議を行いシステムの構築を進めていく流れで対応を行っている。問題点1:リハビリテーション科スタッフと看護師の離床必要患者の認識乖離対応:看護師のADL評価不十分による離床時のリスク管理不足。→臥床傾向患者の生理学的問題点やADL能力低下の評価に対するリハビリテーション科の相談窓口設置。問題点2:カンファレンス内容が不十分対応:患者の発表をする看護師のゴール設定が全て退院に向けられている→現状の患者のアセスメント中心に行えるシステムの設定。問題点3:全看護師への周知不十分対応:離床チームのリンクナースは各病棟の看護科長であるため,病棟会を通じて各スタッフに周知を行う。院内全スタッフに向けたリハビリテーション科主催の勉強会の実施。【考察】離床チームの活動より見出された上記の問題点と対応より以下の課題が考えられる。1.病棟看護師が離床について全身状態の評価,ADL評価等が十分に行えていない。2.病棟看護師が臥床状態の患者に対して問題点を抽出できない。3.現状の離床段階から考える目標設定が適切に行えていない。4.カンファレンスの時間が充分取れていない。5.リハビリテーション科スタッフとのカンファレンスを行っても,病棟スケジュールの中で離床援助を実践しきれていない。以上の課題を改善するために,当科の院内に発信するストラテジーが明確となった。当科の方針として,1.病棟看護師との連携による患者の現状ADLを評価し,現状の離床段階を病棟に伝達する。2.離床段階に応じた病棟リハビリテーションメニューの作成および病棟への提供を行う。3.離床によるADL向上の効果判定を行う。この3つの項目を病棟看護師と繰り返し行うことにより,入院患者の廃用症候群が予防及び改善につながると考えられる。現在の医療情勢の中で,早期回復・早期退院の必要性が深刻に叫ばれている。このような現状の中,我々理学療法士が患者の入院生活を支えるために機能し,惹いては国の医療費の抑制に作用できるよう働きかけていく必要があると考えられる。その実現のためには,院内に広く専門性を周知し,チーム医療の中核を担う存在に理学療法士一人ひとりが成長する必要があると考えられ,当院離床チームのような活動が身を結んだ結果,多くの医療機関で患者の病棟ADLが確保される世の中になることを期待する。【理学療法学研究としての意義】今後の医療機関における理学療法士の立場および業務内容の指標になると考えられる。

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© 2014 公益社団法人 日本理学療法士協会
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