理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-0020
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口述
転移性肺腫瘍による完全無気肺のため人工呼吸器離脱困難となるが挿管中の離床により抜管可能となった1例
西原 浩真岩田 健太郎影山 智広門 浄彦前川 利雄瀬尾 龍太郎矢野 敏史中川 淳
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キーワード: ICU, 完全無気肺, 人工呼吸器
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抄録
【目的】近年多くの研究でICU入室患者において挿管且つ人工呼吸器管理下であっても安全な離床が可能と言われている。Morrisらは人工呼吸器管理を受ける急性呼吸不全患者群に対し48時間以内の早期離床によりICU在室日数や入院期間が短縮したと報告している。今回,転移性肺腫瘍により右主気管支が閉塞することで完全無気肺を生じ,急性呼吸不全となった症例に対し,挿管中の離床と呼吸練習を実施した結果,無気肺が改善され,抜管,早期に在宅復帰可能となったため報告する。【症例提示】69歳男性。既往歴:左腎細胞癌(開腹腎摘出術後)。病前ADL自立。今回血痰と呼吸苦を主訴に救急搬送,転移性肺腫瘍の気道内浸潤によって右主気管支が閉塞した結果,急性呼吸不全となり挿管され,ICU入室となった。【経過と考察】第1病日:A/Cモード PC:8cmH2O PEEP:4cmH2O FiO2:1.0でSpO290%前後。bed上よりリハ開始。四肢MMT4レベル。第4病日:PS:8cmH2O PEEP:5cmH2O FiO2:0.7 Dr,Nsと連携し早期離床,深呼吸・腹式呼吸練習開始。軽介助にて立位練習開始。第6病日:PS:6cmH2O PEEP:5cmH2O FiO2:0.45車椅子移乗練習開始。第8病日:抜管。自己喀痰可能。第11病日:歩行練習開始。ICU退室。第13病日:独步,階段昇降自立。労作時もroom airでSpO296%。第31病日:退院となった本症例は積極的な治療や気管切開は望んでおらず,ADL向上に加え早期抜管や腫瘍からの出血を助長するような吸引刺激を回避し自己喀痰可能とすることがリハビリの治療目標であった。また,無気肺改善後の気道再閉塞による呼吸状態悪化を防止するため,早期から呼吸筋筋力低下予防,肺活量の維持も必要であると考えた。そこで本症例に対する挿管中の離床に加え深呼吸練習を実施した結果,肺換気量やFRCの増大が得られ,右主気管支が開通することで排痰でき,無気肺が改善されたと考えられる。
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© 2015 日本理学療法士協会
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