理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-0037
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口述
通院頻度別に比較した女子バスケットボール選手の膝前十字靭帯再建術後における膝伸展筋力の回復過程
鈴木 理恵吉田 昌平青島 早希相馬 寛人吉川 信人吉田 純橋尾 彩花谷口 里奈下谷 聡
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抄録

【はじめに,目的】過去に我々は,女子バスケットボール選手における膝前十字靭帯再建術(以下,ACLR)後の等速性膝関節伸展筋力(以下,膝伸展筋力)が,競技レベルに関わらず同様の回復過程を示すことを報告した(青島ら2014)。また,渡辺ら(2010)は,術後3ヵ月で20回以上通院している症例では,筋力の回復が良好であると報告している。しかしながら,ACLR後の競技復帰時期までのリハビリテーション(以下,RH)の頻度と膝伸展筋力の回復過程に関しては我々の渉猟しうる限り,一定の見解が得られていない。そこで今回我々は,ACLR後の競技復帰まで当院にてRHを継続して行うことが可能であった女子バスケットボール選手において,競技復帰までの通院回数と膝伸展筋力の回復過程について検討した。【方法】対象はACLRを施行し,競技復帰まで当院にてRHを継続して行うことが可能であった女子バスケットボール選手69名(年齢17.8±1.7歳,身長163.7±7.4cm,体重57.5±5.8kg,通院回数41.8±11.2回)である。対象を通院回数で2群に分けて,通院回数40回以上の48名(年齢17.9±1.6歳,身長163.8±6.7cm,体重57.2±5.2kg,通院回数48.5±2.0回)をA群,通院回数40回未満の21名(年齢17.5±1.8歳,身長163.5±8.9cm,体重58.2±7.0kg,通院回数26.5±7.8回)をB群とした。膝伸展筋力はCybex Normを用いて60deg/secにて測定し,ピークトルクの体重比(Nm/kg)と,患健側比(以下,患健比)(%)を評価値とした。測定時期はACLR後3,4,6ヵ月(以下,3,4,6M)とした。統計学的処理は,A群,B群それぞれの3,4,6Mにおける患側の膝伸展筋力について,群と時期を要因とした二元配置分散分析を用いて比較した。また,A群,B群それぞれの患健比について,対応のないt-検定を用い各時期での2群間の比較を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】60deg/secでの膝伸展筋力は,3MでA群健側2.7±0.5Nm/kg,患側2.7±0.4,患健比96.0±9.5%,B群健側2.7±0.3,患側2.3±0.3,患健比87.0±14.0であった。4Mでは,A群健側2.9±0.3,患側2.9±0.3,患健比100.7±7.3,B群健側2.8±0.3,患側2.5±0.3,患健比91.1±9.8であった。6Mでは,A群健側3.0±0.3,患側3.1±0.3,患健比103.8±6.9,B群健側2.8±0.2,患側2.7±0.3,患健比96.0±10.6であった。膝伸展筋力のA群患側とB群患側間では,A群がB群と比較して3,4,6M全ての時期において有意に高い値を示した。患健比も同様に,3,4,6M全ての時期においてA群がB群と比較して有意に高い値を示した。【考察】今回,患側膝伸展筋力,患健比共に,3,4,6Mの全ての時期においてB群と比較してA群が有意に高値を示していた。このため,ACLR後のRHを行った頻度が膝伸展筋力の回復に関与することが明らかとなった。当院では,競技レベルに関わらずプロトコールが統一されているため,各時期の目標は明らかでありモチベーションを保つことができる。また,各時期に応じたトレーニングや動作練習を段階的に負荷の設定をしながら行い,さらに理学療法士が介入することで,個々の特徴に合わせたプログラムを作成している。それを,週2回の頻度で通院することによって反復することができる。このように,当院ではトレーニングの原理・原則に基づき,ACLR後のRHを行っている。そのため,今回A群とB群ではすでに3Mから差がみられており,約週2回の頻度で術後からの6か月間通院したA群では,B群よりも競技復帰時期までの間で,患側膝伸展筋力の回復が良好であったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から,ACLR後,トレーニングの原理・原則に基づいたRHを競技復帰までの間行うことで,膝伸展筋力の回復が良好となることが明らかとなり,理学療法研究として有用であると示唆された。

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© 2015 日本理学療法士協会
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