理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-0134
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口述
回復期リハビリテーション病棟で在宅復帰に必要な一つの要因
~当院の生活調査における離床率からの検討~
田村 公介宮本 いずみ中村 藍野口 美紗
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キーワード: 離床, 活動, 在宅復帰
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抄録

【はじめに,目的】当院は回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)病棟として在宅復帰を大きな目標としている。在宅復帰の阻害因子として運動機能・認知機能の低下による自宅内ADLの重介助があるとされている。長期臥床は廃用症候群を引き起こし,身体機能面に対しては筋力・耐久性の低下を助長させ,ADL機能向上の阻害因子となる。また,精神機能面に対しても生活リズムが乱れることで自発的な活動や認知機能を低下させることから離床の促進は重要とされている。今回,当院で実施している入院患者を対象とした生活調査(日中:9時~17時)のデータを基に離床率と在宅復帰率,Functional Independence Measure(以下,FIM)利得の関係性を調査し,在宅復帰・FIM利得に対する離床の重要性を明らかにすることを目的とし,検証を行ったので報告する。【方法】対象は平成26年2月~10月までの当院入院患者のうち,入院月と退院月に実施された生活調査が正確に行えた171名(男性84名,女性87名,平均年齢73.4±14.1歳)とし,退院時FIMの平均点はFIM運動項目(以下,mFIM)平均53.5±24.4点,FIM認知項目(以下,cFIM)23.7±9.6点である。方法は対象を日中(9時~17時)の離床率別に高離床率群(日中7時間以上の活動群)・中離床率群(日中5~7時間の活動群)・低離床率群(日中5時間以下の活動群)の3群について在宅復帰率,FIM利得を比較した。統計処理は各離床率群と在宅復帰の関係はχ2検定を用い,各離床率群とFIM利得の関係は対応のないt検定を用い,有意水準を5%未満とした。【結果】在宅復帰率は高離床率群78%,中離床率群67%,低離床率群54%となり,高離床率群と低離床率群間で有意差を認めた。(p<0.05)。mFIM利得の平均は高離床率群14.6点,中離床率群14点,低離床率群7.6点となり,高・中離床率群と低離床率群間で有意差を認めた。(p<0.01)。cFIM利得の平均は高離床率群4.6点,中離床率群3.5点,低離床率群2.9点となり,高離床率群と低離床率群間で有意差を認めた。(p<0.05)。【考察】高離床率群と低離床率群間は在宅復帰率,mFIM・cFIM利得において有意差が認められた。在宅復帰に向け,離床を促進し活動量を向上させることで,患者の耐久性や動作頻度が増え,ADLの介助量軽減・自立へとつながり,在宅復帰率・mFIM利得も高値となることが示唆された。また,離床することで覚醒・睡眠バランスが整い,生活リズムの再構築が行えたと考える。生活リズムの乱れは生活意欲の減退や疲労の増加,中枢神経系の変化による認知機能低下を招く(大橋ら,2010)と言われており,生活リズムの改善により,生活意欲の向上・精神機能の賦活が図れ,cFIMの利得向上にもつながったと考える。離床率が低く,臥床傾向な患者は自発的な行動は少なく,FIM利得も低いことから介助量が多い患者が大半を占めている。そのため,集団体操や対人交流の機会を作り,自発性・活動意欲を向上させ,早期から生活リズムを確立していくことが重要である。そして在宅での生活習慣を構築していくことで在宅復帰後も活動的な生活を送れ,QOLの向上へとつながっていくと考える。また,離床活動の基盤として活動量と栄養面のコントロールも重要である。しかし,食事摂取量の低下により栄養状態が不良な患者もいるため,各患者の栄養面・過負荷のリスク管理も行いながら離床を促し,活動量を調整していく必要性がある。【理学療法学研究としての意義】本邦の理学療法研究において,入院患者の離床率を基にした研究は殆ど無い。回復期リハビリ病棟として在宅復帰へ向け,運動機能や認知機能を向上させ,離床を促進していくことが重要であり,リハビリスタッフが直接関われる3時間だけではなく,残り21時間の生活を医師・リハビリスタッフ・病棟スタッフと共に評価し,離床率や活動量を向上させ,生活リズムを確立していく必要性があると考える。今後は疾患別や認知症の有無,栄養状態で分類するなど,詳細なグループ群に分けた検証が課題である。

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© 2015 日本理学療法士協会
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