理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-A-0154
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ストレッチポールひめトレが身体に及ぼす影響
~側腹筋厚と股関節内転筋群筋力の変化に着目して~
原野 達也川崎 慶匡河野 千里蔵原 麻衣田中 克統松山 裕二宮 省悟
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抄録

【はじめに,目的】近年,ストレッチポールひめトレ(以下:SPH)という商品(株式会社LPN製)が開発され,我々は第49回日本理学療法学術大会で,SPHの姿勢・バランスへの効果について発表した。SPHは,骨盤底筋群トレーニングのツールとして使用されており,鬱や寝たきりの原因となる尿失禁の予防・改善に大きく関与しているといわれている。田舎中は,骨盤底筋群の収縮に伴い,隣接する腹部筋の収縮が確認されると報告しており,SPHを使用したトレーニングは側腹筋の筋力増強に有用であることが期待できる。さらに,骨盤底筋群は,股関節内転筋群と隣接しており,筋膜で結合していると考えられるため,股関節内転筋群へも影響を及ぼすことが予想される。そこで本研究は,側腹筋厚と股関節内転筋群筋力の観点からSPHが,どのように身体に影響を及ぼすのか検証することを目的とした。【方法】対象は,大学に在籍する健常な学生62名(男性32名,女性30名:平均年齢21.0±2.8歳)とした。このうち,実験群(SPHを使用してトレーニングを行う:20名),対照群1(SPHを使用せずトレーニングを行う:21名),対照群2(何も行わない:21名)の3群を無作為に設定した。実験群と対照群1は1回につき1セットのトレーニングを週3回,3週間継続して行った。トレーニングは日本コアコンディショニング協会が提唱しているエクササイズを参考に動画を作成し,対象者は動画を見ながらトレーニングを実施した。トレーニングは,研究者の管理下で行った。トレーニング実施初日と最終日の2日後に3群の測定を行った。測定機器は超音波診断装置(Nemio-XG SSA-580A:東芝社製)と内転外転筋力測定器(T.K.K3367:竹井機器工業株式会社製)を使用した。超音波診断装置による測定項目は側腹筋厚(腹横筋,外腹斜筋,内腹斜筋)とした。筋厚の測定は金子らの先行研究をもとに,前腋窩線上の肋骨下縁と腸骨稜の中点にプローブを当てて行った。方法は,安静背臥位にて呼気終末時の静止画像を記録し,各筋の筋厚を測定した。内転外転筋力測定器の測定肢位は,坐位にて股・膝関節90°屈曲位,足底接地とし,測定機器のパッドに内転筋結節を当て,機器を固定した上で股関節内転筋群筋力を測定した。トレーニング全課程終了後,各群の計測値から初期と最終の差を算出した。統計処理はStudent's t-test及び多重比較としてKruskal-wallis testを用い,有意水準は5%未満とした。統計解析ソフトはMicrosoft office Excel2010及びエクセル統計2012を用いた。【結果】変化量(最終測定値-初期測定値)を算出し,実験群,対照群1,並びに対照群2を比較したところ,側腹筋厚に有意差は認めなかった。股関節内転筋群筋力の3群比較では,実験群において有意に増加が見られた(p<0.05)。【考察】側腹筋厚に有意差を認めなかった要因として,トレーニング期間の短さが考えられる。山内はトレーニング開始後20日まで筋力の増加は筋横断面積の増加を伴わず,その後は筋力の増加と筋横断面積の増加が並行すると述べている。このことから,3週間のトレーニングでは側腹筋厚に対し,充分な影響を与えるに至らなかったと考える。また,股関節内転筋群筋力において実験群に有意な増加が認められた要因として,骨盤底筋群と股関節内転筋群の筋膜による連結があるため,共同筋として働いたことが考えられる。SPHを使用することにより,筋活動におけるオーバーフローが起きたため,股関節内転筋群の筋活動を促進した可能性も示唆された。今後は,実施期間や運動内容などを考慮しながらSPHを使用したトレーニングを行い,より多角的な検証が必要と思われた。【理学療法学研究としての意義】SPHは簡便,安価であることから,利用しやすいツールである。今回の研究では,SPHを使用してトレーニングを行うことで,目的とする骨盤底筋群だけでなく,隣接している筋に対しても筋力増強の有効な手段としての可能性が示唆された。SPHを使用したトレーニングは,臨床だけでなく在宅リハビリテーションとしても,有用となり得ることが推測される。今回,SPHの有効性を示したことは,新たな理学療法を展開する上で大変意義深いといえる。

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© 2015 日本理学療法士協会
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