理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-B-0168
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片脚反復横跳び動作時の切り返し方向の違いが足関節モーメントにおよぼす影響
伊藤 浩充瀧口 耕平柴田 洋平大久保 吏司吉矢 晋一黒田 良祐黒坂 昌弘
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抄録

【はじめに,目的】スポーツによる足関節捻挫の身体的要因の探索には足部・足関節に着目した研究が数多く報告されている。足関節捻挫の身体的要因の解明には方向転換動作時などの荷重下の下肢運動における足関節へのメカニカルストレスを明らかにする必要がある。片脚反復横跳びはカッティング動作を模倣した切り返し動作であり,前十字靭帯機能不全による能力障害をある程度反映できると報告されているが,KinematicやKineticな分析の報告は少なく,足関節に及ぼす影響は十分に検討されていない。そこで,本研究では片脚反復横跳びにおける切り返し動作方向の違いが足関節モーメントに及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。【方法】大学ラグビー部学生10名20下肢のうち膝関節靭帯損傷および足関節捻挫の既往歴を有する5肢を除外した15肢を対象に,片脚反復横跳び動作を分析した。片脚反復横跳び動作は30cm幅を正確に素早く10回反復させた。動作分析には8台の赤外線カメラ(Eagleディジタルカメラ,Motion Analysis社製)を含めた三次元動作解析システム(MAC3Dシステム:株式会社ナックイメージテクノロジー)および床反力計(AMTI社製)を用いて計測した。身体に貼り付けるマーカーは79点,サンプリング周波数は200Hzとし,身体に貼り付けた反射マーカーの空間座標をPCに取り込みリアルタイム動作解析システムEvaRT5.04(Motion Analysis社製)を用いて解析を行った。床反力はAMTI社製床反力計を2枚使用し,三次元動作解析装置と同期してサンプリング周波数1000HzでPCに取り込んだ。キャプチャーしたデータは解析ソフトnMotion(Motion Analysis社製)を用いて解析し,床反力上での外側から内側への切り返し(T1),内側から外側への切り返し(T2)の各接地時間における足関節の底背屈,内外反,内外転の関節角度と関節モーメントを算出した。統計学的検定は,統計学ソフトJMPver6.0を用いてT1とT2との間で対応のあるt検定にて比較検討した。【結果】足関節最大外反モーメントについて,T1ではT2に比べ有意に高値を示した。一方,足関節最大内反モーメントをみると,T2ではT1に比べ有意に高値を示した。また,足関節最大内外反モーメントの変量は,T2ではT1に比べ有意に高値を示した。足関節底背屈モーメントや内外転モーメントは有意な差は認められなかった。【考察】方向転換動作時には足部に荷重負荷が大きくかかるが,切り返す方向によって足関節に加わる負荷が異なり,足関節捻挫や膝関節靭帯損傷のリスクにも影響する。我々の先行研究では,片脚反復横跳びにおいて膝関節に対しては外反モーメントも内反モーメントも外側から内側への切り返し(T1)が内側から外側への切り返し(T2)よりも大きくなることを報告した。今回の足関節に対しては,外反モーメントは外側から内側への切り返し(T1)時に,内反モーメントは内側から外側への切り返し(T2)時に大きくなることが示された。すなわち,片脚反復横跳び動作テストによって,足関節内反捻挫はクロスカッティング動作のようなT2で,外反捻挫はサイドカッティングのようなT1で起こりやすくなることを確認できた。このことは,足関節捻挫後の運動能力障害の判定やリハビリテーション後の回復度合いの判定にも利用可能であることが期待できると考えられる。また,我々の先行研究では,切り替えし動作時の足関節角度と関節モーメントの変動量は股関節の可動域や筋力との間に中等度の相関があり,切り替えし動作時の足関節へのストレスは股関節の内外旋可動域や伸展筋力の影響を受けやすいことを報告した。したがって,片脚反復横跳びテストは,切り返し方向の違いから足関節の機能障害の特徴を判別することができ,また,その機能障害は足部の接地方向や股関節の可動域と筋力による影響があるので,足関節捻挫予防のプログラム立案とその効果判定に役立てることができるのではないかと考えられた。【理学療法学研究としての意義】足関節捻挫はスポーツ外傷の中で非常に頻度の多い外傷であり,再受傷を引き起こしやすい外傷でもある。それ故,再発予防を含めた外傷予防に対する取り組みは重要である。片脚反復横跳びテストは,足関節捻挫を引き起こしやすいスポーツ選手を特定するための一助となり,身体的因子の発見にもつながる。そして,足関節捻挫の予防プログラム立案とその効果の検証にも役立つ可能性がある。これらの点において本研究の意義は深いと考えられる。

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© 2015 日本理学療法士協会
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