理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-C-0427
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今の心身機能でもここまで出来る
小林 崇邦行田 淳子豊田 亮清水 美香子中城 康子江田 恵美湯田 ゆかり高塚 扶美子野坂 晶子堀越 洋一村藤 裕子小堀 鷗一郎
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抄録

【目的】在宅療養中の症例の中には,終末期や進行性疾患の方も少なくないが,著明な心身機能の改善が期待できないこのような症例でも生活空間を拡大できる場合がある。今回,動作方法や練習を変更・工夫し,10回未満の訪問で生活空間が拡大した症例を経験したので報告する。【症例提示】①70歳男性。脊髄性筋委縮症。発症後9年。MMTは上肢近位筋3+・遠位筋3-,下肢近位筋3-・遠位筋1~2。自宅内ADLは歩行器レベルで自立。窓から出入りすれば電動車いすにて一人で外出可能だが施錠できないため,玄関から出て施錠して出かけたい希望があった。②67歳女性。急性リンパ性白血病。トキソプラズマ脳症合併。約1年の入院を経て退院。退院1ヶ月後より訪問開始。左片麻痺あり上肢は廃用肢,下肢は随意性保たれており筋力もMMT 3+レベルだが下垂足。右上下肢MMT概ね4レベル。基本動作は起座・起立が軽介助レベル。本人が最も安らぐ2階リビング・テラスへは退院後一度も上れていなかった。もう一度上がりたい希望があった。【経過と考察】①腋窩でもたれかかるように両松葉杖を使用した歩行と,壁に寄りかかりながらの横歩き段差昇降を練習し,6回(3週間)の訪問で玄関扉からの出入りが可能となった。②階段の段数と同等回数の足踏み・階段1段目での段差昇降練習(後ろ向きに降段)を経て,8回(1ヶ月)の訪問でPT介助があれば2階へ階段昇降(後ろ向きに降段)が可能となった。以来,脳膿瘍が悪化し再入院するまで計3回2階で過ごすことが出来た。死亡により介入終了となってしまったが,ご本人・ご家族には非常に喜んでいただけた。我々は病院と訪問の理学療法を兼任しているが,実際に生活を観察しなければ思いつけない動作・練習方法があると感じている。症例検討等を通し,発想できたことを知識として少しずつ蓄えていくことが重要と考える。

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© 2015 日本理学療法士協会
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