理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-A-0769
会議情報

ポスター
リハビリテーションスタッフの褥瘡に関する評価スケールの理解度調査
尾崎 玲渡部 悦子藤原 春子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】褥瘡の予防や治療には,医師や看護師,薬剤師,栄養士,リハビリテーションスタッフ(以下,リハスタッフ)などの多職種が関わるチーム医療が必要であり,それには目的と情報の共有が不可欠である。そして,褥瘡に関する代表的な評価スケールに,褥瘡の重症度や経過を評価するDESIGN-Rや危険要因から褥瘡の発生リスクを評価するブレーデンスケールやOHスケールがあり,これらの評価スケールは全てのチームメンバーが理解している必要がある。そこで本研究では,リハスタッフの褥瘡に関する評価スケールの理解度を調査し,その理解度を明らかにすることを研究目的とした。【方法】平成26年9月17日から9月22日の間に,当法人の4病院に勤務し,入院患者のリハビリテーション業務に携わるリハスタッフ42名を対象にアンケート調査を実施した。なお,アンケートの質問は,問1「褥瘡に関する評価スケールのDESIGN-Rを知っていますか?」,問2「褥瘡に関する評価スケールのブレーデンスケールを知っていますか?」,問3「褥瘡に関する評価のOHスケールを知っていますか?」の3つとし,回答は「1,知らない」,「2,名前は知っているが褥瘡の何を評価するスケールかは知らない」,「3,褥瘡の何を評価するスケールか知っている」「4,使用したことがある」,「5,その他」の5つからの選択式とした。【結果】アンケート回答者は41名でアンケート回収率は97.6%であった。また,回答者の性別は男性14名,女性27名,職種は理学療法士25名,作業療法士12名,言語聴覚士4名,平均年齢は30.0歳であった。なお,全ての回答者が今までに褥瘡を有する患者のリハビリテーションを実施した経験を持ち,回答者の14.6%が褥瘡に関する委員会やチームに所属した経験を持っていた。アンケートの問1のDESIGN-Rに関する質問では,51.2%が知らない,22.0%が名前は知っているが褥瘡の何を評価するスケールかは知らない,22.0%が褥瘡の何を評価するスケールか知っている,4.9%が使用したことがある,と回答した。問2のブレーデンスケールに関する質問では,51.2%が知らない,31.7%が名前は知っているが褥瘡の何を評価するスケールかは知らない,17.1%が褥瘡の何を評価するスケールか知っている,と回答した。問3のOHスケールに関する質問では,68.3%が知らない,12.2%が名前は知っているが褥瘡の何を評価するスケールかは知らない,19.5%が褥瘡の何を評価するスケールか知っている,と回答した。【考察】平成24年度の診療報酬の改定から褥瘡対策の実施が入院基本料・特定入院料の算定要件となっている。そのため当法人の4病院では,全ての入院患者に対してブレーデンスケールやOHスケールなどで褥瘡の発生リスクの評価を行い,さらに褥瘡を有する患者に対してはDESIGN-Rなどで褥瘡の重症度や経過の評価を行っている。なお,4病院には褥瘡予防対策委員会があり,リハスタッフも委員会に所属している。しかし,アンケート結果より,それぞれの評価スケールが褥瘡の何を評価するスケールなのかを理解しているリハスタッフの割合は,DESIGN-Rで26.8%,ブレーデンスケールで17.1%,OHスケールで19.5%であることが明らかとなった。このことから褥瘡に関する評価結果を確認して,それをリハビリテーション業務に活用しているリハスタッフの割合はさらに低いことが推測された。近年,リハビリテーション時の体動や関節運動などによって皮膚に摩擦やずれ応力が生じて,褥瘡を発生または悪化させることがあると報告されている。しかし,70%以上のリハスタッフが褥瘡に関する評価スケールを理解しておらず,患者の褥瘡の発生リスクや重症度などを把握せずにリハビリテーションを実施している状況があると考えられた。したがって,全てのリハスタッフはリハビリテーションが褥瘡を発生または悪化させる要因になり得ることを理解し,褥瘡に関する評価結果をリハビリテーション業務に活用する必要があると考えられた。それにより全てのリハスタッフが褥瘡に関する客観的な情報を多職種と共有することが出来るようになり,これまで以上に目的と情報を共有した褥瘡予防対策のチーム医療が行なえると考える。【理学療法学研究としての意義】リハスタッフの褥瘡に関する評価スケールの理解度は,DESIGN-Rで26.8%,ブレーデンスケールで17.1%,OHスケールで19.5%であることが明らかとなった。

著者関連情報
© 2015 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top