理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-C-0856
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多椎間固定術施行後の症例に対する理学療法
大前 圭裕鈴木 裕之
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抄録
【目的】脊柱の変形に起因する症状に対して後方固定術を施行した報告は数多くあるが,10椎体を超える多椎間の固定術は報告が少ない。また,脊柱の疾患では脊柱全体のアライメントの評価と介入が必要であるという報告があるが,脊柱のアライメント評価を具体的な数値をもって述べている多椎間固定症例の報告は見当たらない。今回多椎間固定術を施行した患者を担当して得られた知見を以下に報告する。【症例提示】78歳女性。脊椎後側弯症に対し第11胸椎から仙骨までの固定術を施行。一度は自宅退院したものの,9ヶ月後に第9胸椎の偽関節と診断され,第5胸椎までの延長術を施行。【経過と考察】離床は順調に進み,術後1週間で歩行器歩行100m実施可能となる。しかし上位胸椎の屈曲姿勢に起因する腰背部痛や肩甲骨周囲の疼痛が強く,起居動作や挙上位での上肢活動,更衣などを阻害していた。理学療法では固定されていない上位胸椎から頚椎と,股関節の可動域運動及び周囲筋の筋力増強運動を実施し,関節の運動バランスを調整することで疼痛や残存椎体の負担軽減に務めた。また,上位胸椎から頚椎の屈曲が軽減するのに合わせて胸鎖関節や胸肋関節の可動域運動を行い,体幹前面の伸長が得られるよう介入した。術後23日でSVAは142,C7PL-HAは76であったが,41日でそれぞれ105,33となった。このころには立位の姿勢改善とともに疼痛がNRSで10段階中6から1となり大きく改善した。並行して再現性の高い自主練習や,家事動作を含めた動作指導を実施した。術後50日後にはADL自立,屋外杖歩行自立で自宅退院した。多椎間固定術後の患者においては,固定性が獲得され,出来る動作が増える代わりに,急激な姿勢変化によって固定されていない他の部位での代償が求められる。その必要な代償をどの部位でどの程度どの時期に担うのかを考慮して介入することで,疼痛の緩和と脊柱アライメントの改善が得られることが示唆された。
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© 2015 日本理学療法士協会
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