理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-A-1107
会議情報

ポスター
回復期リハビリテーション病棟における糖尿病合併脳血管疾患患者の血糖コントロールと,獲得移動様式,Functional Independence Measure運動項目利得との関係
照井 和史
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)における糖尿病合併脳血管疾患患者の血糖コントロールに関し,入院経過中,有意に血糖値が改善されるが,日常生活活動(以下ADL)の改善による影響はないとの報告がある。今回我々は,回復期リハ病棟入院中の糖尿病合併脳血管疾患患者の,獲得移動様式の違いが,入院中の血糖コントロールに影響を与えるか,Functional Independence Measure運動項目(以下mFIM)利得との関係も踏まえ,後方視的に検討した。【方法】2013年7月から2014年10月までに当院回復期リハ病棟を入退院した脳血管疾患患者166例のうち,糖尿病合併例35例。その中で入院および退院日に近い時期にヘモグロビンA1c(以下HbA1c)を測定していた32例を対象とした。平均年齢は72.5±10.8歳,男性24例(70.6±10.9歳),女性8例(78.1±9.0歳)。入院時HbA1c(7.47±1.45%),退院時HbA1c(6.63±1.02%),獲得移動様式を歩行群(23例),車椅子群(9例)の2群に分け,全体と群ごとで入退院時のHbA1cを対応のあるT検定で,獲得移動様式の群間でHbA1c変化量を対応のないT検定,mFIM利得(22.1±16.9点)とHbA1c変化量(-0.84±1.67%)をSpearmanの順位相関係数にて検定を行った。なお有意水準はいずれも5%未満とした。【結果】HbA1cは入退院時(p<0.01),獲得移動様式の歩行群(p<0.05)で改善が認められた。獲得移動様式の違いによるHbA1c変化量には差がなかった。mFIM利得とHbA1c変化量には相関はなかった。【考察】糖尿病治療の三本柱の一つである運動療法は,主に有酸素運動とレジスタンストレーニングで構成されている。しかし,糖尿病合併脳血管疾患患者のリハビリテーションは身体機能の回復とADLの向上を優先的なアウトカム指標とし,血糖コントロールのための運動療法は十分ではなかったことが予想される。今回,先行研究と同様に,入院中,有意にHbA1cの低下が認められたが,やはりADLの向上と血糖コントロールには関係性が認められなかった。また,獲得移動様式別でも歩行群では有意なHbA1cの低下が認められたが,車椅子群と比較してHbA1c変化量には差が認められなかった。この結果から,糖尿病合併脳血管疾患患者は獲得移動様式に関わらず,入院中の活動量が少ないことが示唆される。今後は合併症の糖尿病にも目を向け,有酸素運動やレジスタンストレーニングを通常のリハビリテーションの他に積極的に取り入れていく必要があると考えられ,活動量計等を使用し,活動量や歩行量と血糖コントロールについても関係性を確かめていきたいと考えている。【理学療法学研究としての意義】糖尿病は脳血管疾患発症のリスクファクターであり,脳血管疾患既往のハイリスク群では,HbA1cを指標とした血糖コントロールが比較的良好な群で脳梗塞再発率が低いことも明らかにされている。本研究は,脳血管疾患に合併した糖尿病に対するリハビリテーションの効果を示すための基礎的研究として意義があると考えられる。

著者関連情報
© 2015 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top