理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-B-1119
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骨転移リハビリカンファレンスに紹介されたがん患者の転帰と特徴
武田 彩三浦 理恵高田 和秀
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キーワード: 骨転移, 転帰, Performance Status
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抄録

【はじめに,目的】進行がん患者のリハビリテーションにおいては,病態把握と進行予測のもと,迅速な退院支援が求められる。なかでも骨転移を有するがん患者では,骨関連事象に対するマネジメントが必要となり,退院支援においては迅速さに加えより慎重な判断や準備が必要である。当院では骨転移リハビリカンファレンス(以下カンファレンス)を開催し,骨転移を有するがん患者のリスク管理と目標設定について,多職種チームによる検討を行っている。今回,カンファレンスに紹介されたがん患者の転帰と特徴を明らかにするために検討を行った。【方法】対象は,当院入院患者のうち,2013年10月以降にカンファレンスに紹介があり,理学療法を施行した後,2014年10月末までに退院したがん患者35名とした。調査項目は,基本属性,転帰,カンファレンス紹介時及び退院時のPerformance Status(以下PS)と日常生活動作(以下ADL)の指標としてFunctional Independence Measure(以下FIM),骨転移部位(脊椎/骨盤骨/長管骨),疼痛/対麻痺/放射線治療/手術の有無,カンファレンス後の入院日数(以下入院日数)とし,カルテ及びカンファレンス記録から後方視的に調査し,対象を①自宅退院した患者(以下自宅群)と転院または死亡した患者(以下非自宅群)の2群に分類し,比較検討を行った。さらに,②非自宅群のうち死亡した患者を除外し転院した患者を転院群とし,自宅群と転院群における退院時PS,退院時FIM,入院日数の差について比較検討した。有意水準は5%未満とし,統計ソフトにはR-2.8.1を使用した。【結果】対象者の疾患は肺がん,前立腺がんがそれぞれ7名,大腸がん6名,腎がん3名,食道がん,乳がんがそれぞれ2名,その他のがんが8名であった。転帰は自宅退院18名,転院11名,死亡6名であった。自宅群(n=18)は,年齢70(66-74)歳,男性11名/女性7名,紹介時PS0/1/2/3/4:0名/1名/6名/7名/4名,退院時PS0/1/2/3/4:0名/2名/6名/10名/0名,紹介時FIM102(87-115)点,退院時FIM108(91-119),入院日数24(16-35)日であった。非自宅群(n=17)は,年齢75(64-80)歳,男性8名/女性9名,紹介時PS0/1/2/3/4:0名/0名/0名/6名/11名,紹介時FIM54(50-58)点,入院日数29(19-40)日であった。転院群(n=11)は,年齢75(66-79)歳,男性4名/女性7名,退院時PS0/1/2/3/4:0名/0名/0名/6名/5名,退院時FIM53(50-60)点,入院日数33(25-55)日であった。①自宅群は非自宅群に比べ,紹介時PSが優位に小さく(p<0.05),紹介時FIMが優位に高値であった(p<0.05)。年齢,入院日数については統計学的に有意な差はみられなかった。性別,脊椎/骨盤骨/長管骨それぞれの部位毎の転移の有無,疼痛/対麻痺/放射線治療/手術それぞれの有無との有意な関連はみられなかった。②自宅群は転院群に比べ,退院時PSが優位に小さく(p<0.05),退院時FIMが優位に高値であった(p<0.05)。入院日数については2群間に有意な差はみられなかった。【考察】カンファレンスに紹介された患者の約半数が自宅退院しており,転院または死亡した患者に比べPSが良好であり,ADLレベルが高かった。退院時のPSが0,1,2の患者は自宅退院,4の患者は転院しており,3の患者の転帰は自宅退院と転院に分かれていた。紹介時にPS3である患者が自宅退院を実現するためには,治療効果の予測やADL改善可能性,病態進行の予測のもと,入院を継続しPSの改善を目指すか,より早期にPS以外の課題分析と解決に取り組みPSを維持した状態での自宅退院を目指すかの判断が必要になると考えられる。また,紹介時にPS4である患者においては,PSを改善させること,または自宅退院を目指す強い動機づけと充実した支援体制が必要であると思われる。退院支援の期間については放射線治療や化学療法等の治療期間にも影響されるため,治療効果への期待と治療期間中のPS悪化リスクを天秤にかけ,場合によっては治療方針変更を選択する必要もある。これらを総合的に判断し迅速かつ安全に自宅退院を実現するためには,多職種連携が不可欠であり,カンファレンスは非常に重要な役割を果たしていると考える。患者が療養の場所を選択できるように早期から自宅退院の可能性や方法を探り,同時に,選択された療養場所に関わらず高いQOLを獲得できるよう,骨転移を有するがん患者の理学療法及びカンファレンスの質を高めていくことが課題である。【理学療法学研究としての意義】カンファレンスに紹介されたがん患者の特徴が明らかとなり,今後の骨転移患者のリハビリテーションにおいて,より効率的な理学療法を提供する為の知見となった。

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© 2015 日本理学療法士協会
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