理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-B-1131
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当院におけるがんリハビリテーションの現状とその効果
中野 勝仁武田 正則藤原 修
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抄録

【はじめに,目的】当院リハビリテーション部では,2013年8月よりがん患者リハビリテーション料の算定を開始している。近年は,がん治療の進歩に伴いがん症例の生存期間が向上してきているが,一方で治療中のADL低下が問題となってきている。当院でもがん患者に対するリハビリテーション(以下リハビリ)を経験する機会はあったが,比較的廃用が進んでしまい退院が遅延している患者を中心に処方されるケースが多い印象であった。そのため算定開始に伴い院内に向けがんリハビリの啓蒙や新たなシステムを導入し,必要ながん患者に対し早期より積極的な介入を進めてきた。今回システム導入前後での実施状況を比較検討し現状を把握することを目的に調査を行ったので報告する。【方法】2013年4月から7月までとがん患者リハビリテーション料を算定開始以降の2014年4月から7月の期間中にがん診断名がありリハビリ処方のあった患者を対象とし後方視的に調査し比較検討を行った。調査項目は基礎情報として性別,年齢,Body Mass Index(以下BMI),診療科,stage分類,オペの有無,経過情報として転帰,在院日数,退院時Barthel Index(以下BI),退院時Performance Status(以下PS),1日当たりのリハビリ実施単位数(以下リハビリ実施単位数/日)とした。がんリハビリシステム導入前にリハビリを実施した群(以下導入前群),がんリハビリシステム導入後にリハビリを実施した群(以下導入後群)の2群に分け年齢,診療科別件数,stage分類,オペの有無,転帰,退院時PS,リハビリ実施単位数/日,在院日数,退院時BIを必要に応じてt検定を用い比較検討した。統計学上の有意水準は5%とした。【結果】対象患者は導入前群で27名(男性21名女性6名),平均年齢74.9±11.1(平均±標準偏差),BMI20.9±3.9,導入後群で60名(男性40名女性20名),年齢74.8歳±9.7,BMI21.1±3.5であった。経過情報を以下に記載する。診療科別件数は,外科11名腫瘍内科6名内科5名呼吸器科3名消化器内科2名泌尿器科0名,導入後群で外科28名腫瘍内科6名内科9名呼吸器科11名消化器内科5名泌尿器科1名であった。stage分類は,導入前群でstageI:6名II:4名III:2名IV:10名,不明5名,導入後群でstageI:6名II:8名III:14名IV:18名不明14名であった。オペの有無については,導入前群で有が10名無が17名,導入後群で有が29名無が31名であった。転帰は,導入前群で自宅13名転院5名死亡9名,導入後群では自宅46名転院10名死亡3名であった。退院時PSは導入前で2.5±2.2導入後で2.1±1.1であった。リハビリ実施単位数/日は,導入前で1.2±0.3単位,導入後で1.0±0.32単位であった。在院日数については,導入前で74.2±68.9日導入後で42.5±30.6日であり導入後群の方が有意に在院日数の減少が認められた。退院時BIは導入前で54.4±43.5導入後で73.8±29.7であり導入後群の方が有意に高値であった。【考察】2013年4月にはがんのリハビリテーションガイドラインが策定されるなどがんリハビリに対する関心は高まりつつあるが,その効果の検証やがんリハビリの周知については十分ではない。当院では,がんリハビリ処方件数が約2.2倍に増加しているが,がんリハビリシステムを導入することで必要な患者を拾い上げ,早期より介入していることがBIの維持,改善や在院日数の減少に繋がったと考えている。またその結果に伴い関係スタッフのがんリハビリへの意識向上にも繋がり処方件数の増加につながったと考える。【理学療法学研究としての意義】本調査によって,当院でのがんリハビリ介入による効果や現状を把握することができ,その有用性が示唆された。

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© 2015 日本理学療法士協会
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