理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-02-4
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口述演題
変形性膝関節症患者の膝関節の内反アライメントと股関節周囲筋の関連性
濱田 涼太南角 学島村 奈那村尾 昌信布留 守敏伊藤 宣中村 伸一郎栗山 新一松田 秀一
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抄録

【はじめに,目的】変形膝関節症(以下,膝OA)患者の主な機能障害として,疼痛,膝関節周囲筋の筋力低下,関節可動域制限,膝関節のアライメント異常が挙げられる。近年,膝OAや人工膝関節置換術(以下,TKA)後患者の股関節周囲筋の機能低下についても指摘されており,その評価の重要性が増している。しかし,膝OAやTKA術後患者の膝関節機能と股関節周囲の機能の関連性について検討した報告は見当たらない。そこで,本研究の目的は,膝OA患者の膝関節の内反アライメントが股関節周囲筋の筋萎縮に及ぼす影響を検討することである。【方法】対象は内反型の膝OA患者41名(男性8名,女性33名,年齢75.6±7.1歳,体重62.2±12.2kg)とした。膝関節のアライメント評価は,立位レントゲン画像を用いて両側の内反角(大腿骨頭-膝中心を結ぶ線と脛骨の骨軸と平行で地面と垂直な線)を算出した。股関節周囲筋の評価として,CT画像を用い,仙腸関節最下端での水平断における画像から,大殿筋,中殿筋,腸腰筋,腹直筋の筋断面積を算出した。膝関節運動機能として,膝関節可動域(屈曲,伸展),膝関節筋力(屈曲,伸展)を測定した。膝関節筋力はIsoforce GT330(OG技研社製)により等尺性筋力を測定し,トルク体重比(Nm/Kg)にて算出した。統計学的処理として,同一被験者内で膝の内反角が大きい下肢と内反角が小さい下肢の股関節周囲の筋断面積,膝関節可動域,膝関節筋力の差を対応のないt検定で比較した。統計学的有意基準は全て5%未満とした。【結果】膝の内反角が大きい下肢の大殿筋2256.3±595.9mm2,中殿筋2324.7±455.6mm2,膝関節屈曲可動域120.4±15.4°,膝関節屈曲筋力0.44±0.26Nm/Kg,膝関節伸展筋力0.89±0.48Nm/Kg,内反角が小さい下肢の大殿筋2505.8±788.4mm2,中殿筋2457.5±396.1mm2,膝関節屈曲可動域128.5±15.1°,膝関節屈曲筋力0.55±0.21Nm/Kg,膝関節伸展筋力1.14±0.56Nm/Kgであり,内反角が大きい下肢の大殿筋と中殿筋の筋断面積,膝関節屈曲可動域,膝関節屈曲,伸展筋力は内反角が小さい下肢と比較して有意に低い値を示した。一方,腸腰筋と腹直筋の筋断面積,膝関節伸展可動域については,左右で有意差を認めなかった。【結論】膝OA患者の機能障害として,膝の内反角が大きい下肢では膝関節機能の低下が生じるとこれまで報告されてきているが,本研究でも同様の結果となった。また,股関節周囲筋の萎縮に関して,膝OA患者は両側罹患であることは多いが,本研究の結果より膝の内反角が大きい下肢では内反角が小さい下肢よりも中殿筋と大殿筋の筋萎縮が進行していることが明らかとなった。以上から,膝OA患者やTKA術後の運動機能の向上を図っていくためには膝関節機能だけではなく,股関節周囲筋に対する評価や介入が必要であることが示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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