理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-03-4
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口述演題
距骨壊死を呈し,アルミナセラミック製の人工距骨置換術を施行した一症例
青木 健太佐藤 愛
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抄録

【はじめに,目的】当院にて距骨壊死の症例に対しアルミナセラミック製の人工距骨置換術を行った。人工距骨置換術は今日では多くは行われておらず,術後リハビリテーションの経過報告は少ない。今回,術後経過を報告する事で今後の術後リハビリテーションの一助となる事を目的とした。【方法】評価項目は,疼痛(NRS),荷重量,アライメント(Leg heel alignment:以下LHA),脚長差(TMD,SMD),不安定性(前方引き出しテスト),ROM(足関節底背屈・内外反),バランス能力(FBS,片脚立位)とした。また,日本足の外科学会の足関節・後足部判定基準(以下:JSSF scale)を用いて術前・術後の機能面の評価を行った。観察期間は入院から退院までの術後34日間とした。症例は60歳代女性,事務職で既往に両側とも内反捻挫あり。現病歴は2014年4月頃に誘因なく左足部に疼痛出現。2015年4月頃に左足部の腫脹,疼痛増悪が見られ当院受診。手術目的にて同年6月頃に入院。術後2週間ギプス固定後,関節可動域運動・荷重練習を開始した。【結果】術前は安静時痛NRS7/10,歩行時痛NRS9/10であり,JSSF scale48/100点であった。術後1日~14日のギプス固定中は免荷であり,安静時痛の訴えがあった。ギプスカット後ROMは足関節背屈-5°,底屈30°,内反20°,外反5°であり,いずれも疼痛・不安感の訴えがあった。荷重は20%PWB,LHAは左右ともOKCで5°,CKCで10°,足関節前方引き出しテストは陰性,TMDは右76.5cm 左78.0cm,SMDは右80.0cm 左81.0cmであった。術後16日で安静時痛は消失し,50%PWB,術後21日で80%PWB,術後22日でFWB可能となった。FBSは51点/56点であり片脚立位保持は9秒,術後27日には1分以上可能となったが,10秒未満でバランスを崩す場面もあった。術後24日には両松葉杖での100m歩行,術後30日には独歩での100m歩行が可能となり,NRS2/10の疼痛があった。JSSF scaleは62/100点と改善し,下肢長・LHAは変化がなかった。術後34日でROMは底屈45°,背屈10°,外反10°,内反25°であり,しゃがみ動作が可能となった。NRS1/10の疼痛は残存,FBSは53/56点であった。【結論】今回,人工距骨置換術後の経過を観察した。初期では不安定性はみられなかったがROMでの不安感の訴えが強く,手術でATFLを切除した影響と考える。アライメントや下肢長は初期,全荷重後とも著明な左右差はなかった事から手術による構造面への影響は少ないと考える。術後34日で疼痛は1/10まで減少,しゃがみ動作も可能になり退院後に日常生活への影響は少ないと考える。バランス能力はFBS53点,片脚立位保持も2分以上可能となったが数秒しか保持できない場面もあり,固有感覚受容器が豊富に存在する距骨が人工距骨に置換された影響が考えられ,固有感覚受容器の促通を行う必要性があると考える。JSSF scaleの値も術前と比較して改善がみられており,足関節を固定しない術法が機能面での改善に繋がったのではないかと考える。

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© 2016 日本理学療法士協会
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