理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-04-4
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口述演題
残存腱板の違いによる当院のリバース型人工肩関節全置換術後の短期経過
播井 宏充太田 隆慈近藤 阿矢乃鈴木 将胤冨永 亨
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抄録

【目的】2014年4月より,本邦でもリバース型人工肩関節全置換術(以下RSA)が施行され,当院でも2014年11月よりZimmer製Trabecular Metal systemを用いたRSAを施行している。RSA後の挙上主動作筋である三角筋に対する肩甲下筋や小円筋の残存機能を比較した経過報告は少ない。そこで術前MRIの残存腱板を評価し,術前と術後3ヶ月の短期経過で上肢機能を調査した。【方法】対象は,当院でRSAを施行し退院後,外来理学療法まで実施した10例10肩(上腕骨骨折例と術前MRI未実施例は除いた)男性4例,女性6例,平均年齢80±12.3歳,身長150.9±13.8cm,体重48±18.6kg,BMI21.4±6.4kg/ⅿ2で,疾患名は,腱板断裂性関節症4例,変形性肩関節症2例,腱板広範囲断裂3例,肩関節脱臼骨折後腱板損傷1例であった。対象を手術時肩甲下筋損傷後の引き込みがなく縫合可能であった群と不可群に分け,さらに縫合可能群では,術前MRIのT2斜位矢状断において,Goutallierのstage分類で小円筋の脂肪変性が軽度(stage0~2)と脂肪変性に加え損傷腱板の引き込みまで認める重度(stage3・4)の3群に分けた。また,入院期間や理学療法期間などと合わせ,術前と術後3ヶ月の日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOA),自他動可動域を調査した。【結果】RSA後の10例は,肩甲下筋縫合可能で小円筋脂肪変性軽度群(以下A群)4例,肩甲下筋縫合可能で小円筋脂肪変性重度群(以下B群)3例,肩甲下筋縫合不可群(以下C群)3例であった。術前と術後3ヵ月を中央値で比較するとJOAは,術前(以下A群/B群/C群)は,60点/60点/38点。術後3ヶ月では,62点/45点/40点であった。術前肩関節可動域は,他動で屈曲160°/110°/105°外転145°/110°/120°外旋60°/60°/40°,自動で屈曲33°/90°/65°外転40°/70°/45°外旋28°/25°/-20°。術後3ヶ月では,他動で屈曲130°/130°/120°外転115°/90°/90°外旋33°/40°/45°。自動で屈曲93°/85°/25°外転90°/80°/30°外旋5°/0°/-15°であった。術後3ヶ月での肩関節自動可動域の外旋は低下したが,術前より屈曲・外転でA群が良好な傾向が見られた。【結論】肩甲下筋の縫合可能で小円筋脂肪変性の軽度なA群では,術前自動可動域の低下や1か月の安静と自動運動の制限があるにもかかわらず。術後3ヶ月での自動可動域屈曲と外転で良い傾向が見られた。上腕骨を挙上する三角筋筋力を発揮するため,肩甲骨側のglenosphereに対し,上腕骨stem側に作用する肩甲下筋や小円筋の機能が残存すれば,術後3ヶ月の早期に術前より挙上能力は改善する事が示唆された。しかし,まだ症例数が少なく。今後の理学療法の調査は必要である。

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