理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-05-6
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口述演題
腱板大・広範囲断裂術後の患者満足度に影響する因子の検討
術後6ヵ月時と術後12ヵ月時の特徴
今井 孝樹徳永 剛流合 慶多小山 義博坂本 拓也
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抄録

【はじめに,目的】鏡視下腱板修復術(ARCR)は良好な成績が報告される一方で,腱板大・広範囲断裂に対する治療成績は高い再断裂率や脂肪変性,臨床経過から成績不良という報告が散見される。再断裂発生時期については術後6ヵ月以内に多く,術後6ヵ月以降はあらゆる日常生活が許可されることが多い。満足度に対する過去の報告は最終経過時に多く,経過時期別での満足度に関する報告は少ない。そこで今回,経過時期別による満足度に影響する因子を検討することを目的とした。【方法】2011年1月から2014年12月までにARCRを施行した腱板大・広範囲断裂患者のうち,術後12ヵ月以上経過観察しえた44例44肩を対象とした。平均年齢62.9±8.3歳,平均罹病期間10.3±9.1ヵ月であった。満足度の評価にはUniversity of California at Los Angeles shoulder(UCLA)scoreの患者満足度を使用した。肩関節機能評価は自動関節可動域(屈曲,外転,下垂位外旋,結帯),筋力(屈曲,外転,下垂位外旋,下垂位内旋),疼痛(安静時,運動時,夜間時NRS)を評価した。自動関節可動域は座位にてゴニオメーターを使用し,結帯は母指脊椎位置から点数化した。筋力はHand-Held Dynamometerにて,最大等尺性筋力を測定し健患比を用いた。患者満足度の有無を従属変数,肩関節機能評価および年齢,性別,罹病期間,断裂サイズ,術後12ヶ月時のGoutallier分類および菅谷分類を説明変数とし,多重ロジスティック回帰分析にて危険率5%未満を有意差ありと判定した。さらに有意差を認めた因子に対しROC曲線を用いCut-Off値を算出した。【結果】満足度に影響する因子は,術後6ヵ月時では屈曲筋力および運動時痛であり(p<0.05),術後12ヵ月時では自動屈曲可動域および運動時痛であった(p<0.05)。有意差を認めた因子のROC曲線の最高精度に基づくCut-Off値,Area Ander the Curve(AUC),感度,特異度を以下に示す。術後6ヵ月時の屈曲筋力Cut-Off値0.52,AUC0.78,感度82.6%,特異度67.7%,p<0.01,運動時痛Cut-Off値NRS2,AUC0.77,感度78.3%,特異度61.9%,p<0.01であった。術後12ヵ月時の自動屈曲可動域Cut-Off値145°,AUC0.77,感度81.1%,特異度60.0%,p<0.01,運動時痛Cut-Off値NRS1,AUC0.75,感度75.7%,特異度70.0%,p<0.05であった。【結論】経過時期別により満足度に影響を与える因子が変化する可能性があること,また運動時痛は術後6ヵ月,12ヵ月時ともに満足度に影響することが示された。

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