理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-08-4
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口述演題
姿勢制御エクササイズが下肢筋の同時活動に及ぼす影響に関する予備的調査
原田 翔平白銀 暁
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抄録

【はじめに,目的】主動作筋と拮抗筋が同時に活動することを筋の同時活動といい,同時活動の増加により,転倒リスクが増加するという報告がある。一方,足関節周囲筋の同時活動は,姿勢制御エクササイズにより即時的に減少すると報告されている。しかし,長期的な介入効果と,関連が予測される股関節周囲筋の同時活動についての報告は少ない。今回,先行研究をもとに,不安定板を用いてそれらを検証するための研究デザインを考案した。本研究は,その研究デザインの妥当性を確認するとともに,姿勢制御に対する股関節周囲筋の影響を予備的に調査した。【方法】対象は健常成人10名(21.9±1.1歳),介入群5名と対照群5名を無作為に分類した。整形外科的・神経学的疾患を有する者は除外した。同時活動の評価に表面筋電図(LEG1000日本光電社製:1000Hz)を使用した。測定筋は利き足の前脛骨筋と腓腹筋内側頭,大腿直筋と大腿二頭筋とし,電極間距離は2cmとした。課題は,傾斜を前後方向に制限した不安定板(30×50cm)の上に20秒間できるだけ揺れずに立位保持をすることとした。介入群は20秒×10回の立位保持を3日間行った。その都度,不安定板上での計測を介入前後で2回行った。対照群は床上で立位保持し,その前後で2回計測した。筋電図波形は平滑化(50msecウインドウ)し,最大随意収縮により正規化した。得られたデータから,Falconerらの推奨する同時活動の指標であるco-contraction index(CI)を算出し,その平均値を解析対象とした。統計処理には,SPSS ver.21.0を使用した。CIの経時的変化について近似直線し,各群の近似直線の傾き成分に対して,対応のないt検定を行った(有意水準5%)。介入効果についても検討するために効果量(ES)を求めた。【結果】足関節周囲筋の近似直線の傾きは,介入群-1.00±5.57,対照群-0.27±2.94であり,有意差はなかった(p=0.80)。また,その効果は小さかった(ES=0.16)。股関節周囲筋の近似直線の傾きは,介入群2.44±4.96,対照群-1.79±3.19であり,有意差はなかった(p=0.14)。また,負の効果を認めた(ES=-1.01)。【結論】本研究は,先行研究よりも秒数を増やした介入であった。介入群では,中等度の負の相関(r=-0.53)が認められ,CIの軽減効果が示唆された。しかし,効果は小さく,秒数の増加は軽減効果に影響しない可能性があると考えられた。股関節周囲筋ではCIが増加し,大腿直筋を主動作筋,大腿二頭筋を拮抗筋とする傾向がみられた。したがって,股関節を優位とした姿勢制御ではなかった可能性がある。本研究は不安定板の傾きや重心位置などを計測していないため,足関節戦略や股関節戦略の出現の仕方について言及できない。今後は不安定板の傾きや重心位置を含めて,運動学的・運動力学的データを収集する必要がある。また,大規模研究に向けて,エクササイズの回数や介入日数といった,その他の要因の検討が必要である。

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© 2016 日本理学療法士協会
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