理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-08-6
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口述演題
ステップ動作における片脚着地時の下肢および体幹アライメント
利き足と軸足の比較
成田 貴紀大山 祐輝渡辺 秀臣山路 雄彦
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抄録

【はじめに,目的】下肢には利き足・軸足が存在し,上肢の利き手・非利き手と同様に,利き側が運動機能面で優れていることが予想される。井原ら(2005)は,膝前十字靭帯損傷(以下,ACL損傷)に関して軸足が利き足に比べ,その損傷発生率が高いとしている。しかし,利き足・軸足について運動学的な検討をしたものは少ない。本研究は,ステップ動作における片脚着地に着目し,運動学的観点より利き足・軸足の相違を検証することを目的とした。【方法】対象は下肢に整形外科的疾患のない健常男性10名(年齢21.5±2.2歳,身長172.5±6.2cm,体重61.8±5.2kg)とした。測定課題は,両脚立位から前外方へ跳躍し,片脚で着地,その直後に前内方へ跳躍し両脚着地するという一連の動作(以下,ステップ)とし,ステップ長は被験者それぞれの棘果長とした測定は左右それぞれ3回,計6試技とした。尚,ボールを蹴る側を「利き足」,対側を「軸足」,片脚着地側を「ステップ脚」と定義した。動作解析には,2台のハイスピードカメラ(CASIO社製EX-F1)を用い,サンプリング周波数は300Hzとし,対象者の正面と側方にそれぞれ設置した。マーカーは両側の肩峰,上前腸骨棘,大転子,膝蓋骨中央,膝関節裂隙外側,足関節前方,外果,第1趾末節骨背側面,第5中足骨頭に貼付した。解析位相はステップ脚の足底が全離地した瞬間(①),ステップ脚の足底が全接地した瞬間(②),片脚着地時のステップ脚膝関節最大内反位(③),片脚着地時のステップ脚膝関節最大屈曲位(④)の4相とした。得られた画像から画像処理ソフトウェアImageJを用い,前額面では①・②・③相における体幹側屈角度,骨盤傾斜角度,股関節外転角度,膝関節内反角度,足関節外転角度を,矢状面では①・②・④相における股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度をそれぞれ算出した。統計処理にはIBM SPSS Statistics ver. 21.0を使用し,Shapiro-Wilk検定にて正規分布している値は対応のあるt検定を,正規分布していない値はWilcoxonの符号付順位和検定を行った。尚,有意水準は5%とした。【結果】軸足は利き足に比べ,片脚着地時のステップ脚膝関節最大内反位(③)における膝関節内反角度(利き足:15.4±7.2°,軸足:22.6±5.5°)と骨盤傾斜角度(利き足:10.6±3.9°,軸足:13.4±3.2°)で有意に高値を示した(p<0.05)。その他の項目ではいずれも有意差を認めなかった。【結論】軸足は利き足に比べ,片脚着地時のステップ脚膝関節最大内反位(③)での膝関節内反角度と骨盤傾斜角度において有意に高値を示したことから,利き足・軸足の差は前額面上で現れることが示唆された。非接触型ACL損傷発生率は軸足で高いと報告されており,本研究で示された着地時の軸足アライメントがその発生機序に関連している可能性があると考える。

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© 2016 日本理学療法士協会
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