理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-10-3
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口述演題
人工股関節置換術後早期におけるホームエクササイズは術後長期の運動機能の向上に有効である
南角 学島村 奈那村尾 昌信黒田 隆松田 秀一
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抄録

【はじめに,目的】本邦の人工股関節置換術(以下,THA)術後では在院日数の短縮が図られており,術後の機能回復が十分に得られないまま退院となる。THA術後早期のホームエクササイズが術後早期の運動機能の向上に有用であることは報告されており,退院後には入院中からのエクササイズを継続していくことが必要である。しかし,THA術後早期のホームエクササイズが術後中期・長期的な視点での運動機能の改善に有用であるかを検討した報告は見当たらない。本研究の目的は,THA術後早期におけるホームエクササイズが術後長期の運動機能の回復に影響を及ぼすかを検討することである。【方法】対象は変形性股関節症で初回THAを施行した32名とし,術後4週間の入院中に通常の理学療法を行った16名(以下,対照群)と,通常の理学療法を行い退院となった後ホームエクササイズを実施した16名(以下,Ex群)に無作為に分類した。エクササイズの方法は,仰臥位での股関節屈曲と外転運動,座位での膝関節伸展運動,側臥位での股関節外旋運動とした。すべての運動はセラバンドを用いた抵抗運動で負荷量は「ややきつい」に設定して実施した。これらのトレーニングは術後4週から術後8週までの4週間実施し,その後はエクササイズを行わなかった。評価時期は術後4週(介入前),術後8週(介入後),術後6ヶ月の3時期とした。アウトカムの項目は,術側の股関節屈曲と外転の関節可動域,術側の股関節外転筋力と膝関節伸展筋力,Timed up and go test(以下,TUG),5回立ち座りテストとした。統計処理には,二元配置分散分析と対応のないt検定を行い,統計学的有意基準は5%未満とした。【結果】研究途中でEx群が2名,対照群が1名離脱し,最終的にEx群14名,対照群15名となった。介入前の基本属性と各評価項目は両群間で有意差を認めなかった。分散分析の結果,股関節外転筋力とTUGは,術後経過とトレーニングの有無に交互作用を認めたことから,術後早期のホームエクササイズが術後の運動機能の回復過程に影響していることが明らかとなった。介入後の股関節外転筋力は,Ex群0.89±0.25Nm/kg,対照群0.73±0.23Nm/kgであり,Ex群のほうが対照群よりも大きくなる傾向を示した(p=0.07)。さらに,術後6ヶ月の股関節外転筋力はEx群1.00±0.24Nm/kg,対照群0.76±0.23Nm/kgであり,Ex群が対照群より有意に大きい値を示した。また,術後6ヶ月のTUGは,Ex群6.48±1.05秒,対照群7.82±1.67秒であり,Ex群のほうが対照群よりも有意に低い値を示した。【結論】ホームエクササイズによって術後早期に運動機能の向上が得られると,その後日常生活において高い活動量を確保することができるために術後6ヶ月での運動機能に差が生じたと考えられる。以上から,THA術後早期におけるホームエクササイズは術後早期の機能向上とともに術後長期的な視点からも股関節外転筋力や歩行能力の回復に重要であることが示された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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