理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-13-3
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口述演題
外反母趾術後の歩行と後足部形態との関連
野中 理絵小保方 祐貴西 亮介原 耕介西 恒亮日尾 有宏
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キーワード: 外反母趾, 後足部, 足圧
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抄録

【はじめに,目的】外反母趾の手術に対する患者側の期待として,歩行機能の改善が報告されている。しかし歩行を含めた術後成績・変化に関する報告は少ない。また外反母趾は足部全体の変形として考えられているが,後足部に着目した報告も少ない。そこで本研究では歩行を含めた術後変化を調査し,歩行と後足部形態との関連性を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,当院にて外反母趾と診断されLapidus変法を施行した女性7名9足,平均年齢70.1±9.5歳。レントゲン所見,臨床評価指標,歩行を術前と術後1年でそれぞれ評価,測定した。レントゲン所見は外反母趾の評価として外反母趾角,第1・第2中足骨間角,第1・第5中足骨間角を用い,後足部形態の評価として踵骨傾斜角,距骨第1中足骨角を用いた。臨床評価指標はAOFAS(the American Orthopaedic Foot and Ankle Society)scoreを用いた。歩行の評価は足圧を用い,測定にはWin-pod(Medicapteurs社)を使用した。至適速度にて3回試行,機器が選択した1回を代表値として用いた。足部を母趾,第2-5趾,中足骨頭内側,中足骨頭中央,中足骨頭外側,中足部,後足部の7分割にし,各部位の最大圧,面積を求めた。統計処理は,術後変化の検討にWilcoxonの符号付順位検定を,また術後の歩行と後足部形態との関連性の検討に,Spearmanの順位相関係数をそれぞれ用いた。統計ソフトRを使用し,有意水準は5%とした。【結果】術前後の比較で有意差が認められた項目とその平均値(術前:術後)は,外反母趾角(45.5±12.3°:12.5±8.7°),第1・第2中足骨間角(18.4±4.1°:11.0±2.3°),第1・第5中足骨間角(39.1±3.5°:31.1±2.7°),AOFASscore(51.6±13.3点:89.2±8.2点),母趾最大圧(442.7±920.2g/cm2:3207.3±1618.8g/cm2),母趾面積(1.2±2.2cm2:5.0±3.0cm2),第2-5趾最大圧(812.9±1309.3g/cm2:1707.4±1216.8g/cm2),中足部面積(21.0±5.2cm2:14.8±7.2cm2)であった。術後の歩行と後足部形態との関連では,距骨第1中足骨角と母趾最大圧(r=0.97,p<0.01),第2-5趾面積(r=0.73,p<0.05)でそれぞれ有意な正の相関が認められた。【結論】レントゲン所見,AOFASscoreの術後変化から,手術による構造・機能面の改善,疼痛軽減が認められた。それに伴い母趾荷重が可能となり,母趾面積・最大圧が増大したと考える。一方で後足部形態の術後変化は認められず,手術の影響を受けないことが示唆された。また距骨第1中足骨角と母趾最大圧に有意な正の相関が認められ,内側縦アーチの低下に伴い母趾最大圧が増大した。外反母趾発症と関連する回内足(Howard, 2013)や軽度外反母趾(Alfonso, 2010)でそれぞれ母趾圧増大が報告されている。そのため後足部の影響による母趾圧増大は,長期的な予後を踏まえると改善する必要性があると考える。手術の影響を受けない後足部へ着目することは,外反母趾に対する術後理学療法の一助となるのではないかと考える。

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© 2016 日本理学療法士協会
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