理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-16-3
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口述演題
大腿骨頚部骨折術後症例に対する電気刺激併用筋力強化法の効果
徳田 光紀唄 大輔藤森 由貴亀口 祐貴庄本 康治
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抄録

【はじめに,目的】大腿骨頚部骨折は最も受傷頻度の多い骨折の一つで,受傷後の歩行能力は70%の症例で低下する。大腿骨頚部骨折後の歩行能力を決定する因子は,年齢や骨折型,認知機能など様々であるが,特に膝伸展筋力は独立した因子であると報告されている。従来から筋力低下に対して電気刺激治療を用いた筋力強化法が有用であることが示唆されているが,受傷頻度の高い大腿骨頚部骨折術後症例を対象に,急性期での効果を示した報告は皆無である。本研究の目的は,大腿骨頚部骨折術後の急性期症例を対象に,電気刺激治療を併用しながら筋力強化運動を実施する電気刺激併用筋力強化法(Method of Electrical Stimulation for Muscle Strength:MEMS)の効果を検討することとした。【方法】対象は元々歩行可能で大腿骨頚部骨折を受傷し人工骨頭置換術を施行した16名とした。無作為にMEMS群とコントロール群(電気刺激なし)に割り付け,通常の理学療法を全症例に施行した。MEMSは術後翌日より開始し,電気刺激に合わせて膝伸展運動を毎日20分間実施した。電気刺激パラメーターは電気刺激治療器(ESPURGE,伊藤超短波社製)で二相性パルス波,パルス幅300μs,周波数80pps,運動レベル(筋収縮閾値以上)の耐えうる最大強度でON:OFF時間=5:7秒に設定し,自着性電極(PALS 5cm×9cm,Axelgaard社製)を患側大腿四頭筋に対して4枚貼付した。評価はハンドヘルドダイナモメーター(μtasF-1,アニマ社製)で膝伸展筋力(患健側比%を算出)と日本整形外科学会股関節機能判定基準(股関節JOAスコア)を術後1,3,5日目,1,2,3,4週目に測定し,各動作(下肢伸展挙上,移乗,一本杖歩行)の自立するまでに要した日数(日)を記録した。統計解析は測定日別に各評価項目を群間比較するため,対応のないt検定を用いた。有意水準は5%とした。【結果】膝伸展筋力(患健側比%)は全測定日でコントロール群(35.3±10.3,44.9±11.6,52.5±14.2,52.6±15.3,52.8±12.6,60.1±11.3,63.3±12.2)よりもMEMS群(51.0±11.4,62.6±16.5,70.7±18.5,75.7±16.5,77.2±8.1,80.4±10.1,82.2±7.5)が有意に高値を示した。股関節JOAスコアは術後3日目と2,3週目でコントロール群(13.4±4.0,23.3±6.8,28.8±4.2,31.4±5.3,38.1±6.8,46.0±5.4,53.5±7.7,)よりもMEMS群(16.3±4.4,31.9±8.1,34.5±10.3,37.9±10.5,46.6±7.3,53.5±8.0,60.6±6.8)が有意に高値を示した。各動作(下肢伸展挙上,移乗,一本杖歩行)の自立するまでに要した日数(日)は各群(MEMS群:コントロール群)で(2.6±1.6:7.5±1.6,2.4±1.1:6.6±4.5,13.4±5.2:29.3±8.1)となり,コントロール群よもMEMS群が有意に低値を示した。【結論】大腿骨頚部骨折術後の急性期症例に対するMEMSは,膝伸展筋力や股関節JOAスコアの早期改善および各動作(下肢伸展挙上,移乗,一本杖歩行)の早期獲得に効果的に寄与することが示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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