理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-14-3
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口述演題
要支援・要介護者における下肢筋力非対称性と歩行速度について
新井 慎岩田 晃
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抄録

【はじめに,目的】高齢者にとって,歩行速度はADLの自立や施設入所,さらに生命予後との関連が認められた非常に重要な指標である。この歩行速度を規定する最も重要な要因の一つとして,膝関節伸展筋力が挙げられる。この膝関節伸展筋力に関して,LaRocheらは,左右の非対称性が低い群と比較して,非対称性が高い群で通常歩行速度が低下していることを示し,筋力の大きさだけではなく,左右の非対称性が重要であることを明らかにした。一方,新井らは,非対称性の高い群と低い群の比較を行い,最大歩行速度に有意な差が認められなかったと報告しており,LaRocheらとは異なる結果が得られている。これらの先行研究では,地域在住の健常高齢者を対象としている。歩行機能は健常高齢者と比較して,虚弱高齢者の方が低下しているため,非対称性が歩行に与える影響は,虚弱高齢者の方が大きいことが考えられる。そこで,本研究では,要支援・要介護者における下肢筋力非対称性が,通常および最大歩行速度に影響するかどうかを検証した。【方法】通所リハビリテーションを利用し,屋内歩行が歩行補助具なしで可能な47名(平均年齢77.4±5.9歳,男性10名,女性37名,要支援1 23名,要支援2 10名,要介護1 12名,要介護2 1名,要介護3 1名)を対象とした。測定項目は,膝関節伸展筋力,5mの通常および最大歩行速度とした。膝関節伸展筋力は,坐位,膝関節屈曲90°位にて等尺性収縮筋力を5秒間行い,ハンドヘルドを用いて行った。通常および,最大歩行速度は,8 mの歩行路の中央5 mの歩行に要した時間から算出した。下肢筋力の非対称性については,Carabelloらの方法に従い,(左右の膝伸展筋力の差の絶対値)/(左右の膝伸展筋力が大きい方の値)×100で非対称性(%)算出し,Perryらに従い,非対称性が15%未満を対称群,15%以上を非対称群とし,対応のないt検定を用いて両群間の比較を行った。統計解析には,SPSS 23.0を用いた。【結果】対称群(n=27,平均対称性6.6±4.4%)の年齢は77.9±5.8歳,膝関節伸展筋力は右が183.2±54.9 N,左が176.8±52.8 N,歩行速度は通常が1.0±0.2 m/sec,最大が1.3±0.3 m/secであった。非対称群(n=20,平均対称性21.5±5.9%)は77.6±6.0歳,膝関節伸展筋力は右が176.6±76.1 N,左が166.4±52.8 N,歩行速度は通常が1.1±0.2 m/sec,最大が1.4±0.2 m/secであった。対称群と非対称群の両群間の比較おいて,年齢,通常歩行速度,最大歩行速度に有意な差は認められなかった。【結論】要支援・要介護者において,下肢筋力の非対称性が高い群と低い群の比較を行った結果,歩行速度に有意な差が認められなかった。この結果は,虚弱高齢者においても,非対称性が歩行機能に与える影響が認められないことを示唆している。

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© 2016 日本理学療法士協会
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