理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-21-5
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口述演題
ロコモ度の違いによるロコモーショントレーニング介入効果の検討
湯村 良太石橋 英明藤田 博曉
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抄録

【はじめに,目的】ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは,運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態であり,進行すると要介護になる危険が高まるとされている。日本整形外科学会は,ロコモリスクの評価法としてロコモ度テストを発表し,ロコモの予防・改善のための運動としてロコモーショントレーニング(ロコトレ)を推奨している。ロコモ度は運動機能と関連があるため,ロコモ度が異なればロコトレによる介入効果も異なることが予想される。そこで,本研究では,地域在住の中高年者を対象として,ロコモ度の違いによるロコトレの運動機能改善効果を検討した。【方法】対象は,住民票データから抽出した60代70代の要支援・要介護認定非該当者303名(男性150名,女性153名)である。対象者を介入群と対照群に割り付けした後,介入群にはロコトレとして,スクワット,片脚立ち,ヒールレイズを指導し,ウォーキングを推奨した。運動機能評価は,ロコトレ開始前,3ヶ月後,6ヶ月後の計3回とし,評価項目はロコモ度テスト(ロコモ25,立ち上がりテスト,2ステップテスト),握力,膝伸展筋力,足趾把持力,5回立ち上がり時間,開眼片脚起立時間,FRT,6m歩行速度の計10項目とした。解析は,ロコトレ開始前の評価におけるロコモ度テストの結果より,ロコモ度1に該当する者を「ロコモ群」,該当しない者を「非ロコモ群」と分類した上で,ロコトレ開始前と3ヶ月後,6ヶ月後の経時的変化を反復測定の二元配置分散分析により比較した。【結果】6ヶ月後の評価まで継続したのは239名(78.9%)で,「ロコモ群」は男性で63名(51.2%),女性で65名(56.0%)であった。男性の「ロコモ群」では,握力,膝伸展筋力,開眼片脚起立時間,6m歩行速度において,「非ロコモ群」では,握力,膝伸展筋力,足趾把持力,開眼片脚起立時間,FRTにおいて,介入群に有意な改善がみられた。女性の「ロコモ群」では,握力,膝伸展筋力,開眼片脚起立時間,FRT,6m歩行速度において,「非ロコモ群」では,膝伸展筋力,5回立ち上がり時間,開眼片脚起立時間,FRTにおいて,介入群に有意な改善がみられた。男女ともに「ロコモ群」のみが6m歩行速度において改善がみられ,膝伸展筋力において早期から改善がみられた。【結論】ロコトレによる介入効果については,これまでも報告されているが,今回の研究においても6ヶ月間のロコトレにより運動機能の改善がみられ,その有用性が確認できた。「ロコモ群」と「非ロコモ群」とを比較すると,介入効果の認められた項目数に大きな差はないが,「ロコモ群」にのみ改善がみられた項目や,早期から介入効果が認められた項目があることから,ロコトレを指導する際には,参加者全員に同一の運動を指導するのではなく,ロコモ度を考慮した指導を行う必要があると考えられる。

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© 2016 日本理学療法士協会
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