理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-07-4
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安定型および不安定型大腿骨転子部骨折術後患者の運動機能回復の特徴
目黒 智康海老澤 玲成田 美加子桒原 慶太塗山 正宏占部 憲
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抄録

【はじめに,目的】大腿骨転子部骨折は安定型骨折と不安定型骨折とに分類されるが,本邦においては,大腿骨転子部骨折術後の機能障害が,骨折型の分類と関連付けて検証された報告は殆どみられない。しかし,安定型と不安定型骨折では,骨折周囲の軟部組織に対する機械的な損傷や骨整復の難易度も異なるため,機能障害や予後への影響も異なることが考えられる。したがって,大腿骨転子部骨折に対する急性期の理学療法を進めるうえでは,骨折型の分類に基づいて機能障害の特徴を把握することも重要と思われる。本研究の目的は,大腿骨転子部骨折における安定型骨折と不安定型骨折の運動機能を比較し,骨折型の違いにより術後の機能回復の特徴を検証することとした。【方法】受傷前に屋内杖歩行ないし独歩が自立していた大腿骨転子部骨折患者22名を対象とし,医師の診断にて骨折型により安定型群11名(84±7歳,男性2名,女性9名)と不安定型群11名(83±6歳,男性1名,女性10名)に分類した。調査項目は手術時間,術中出血量,術後在院日数,自宅退院率,および運動機能とした。運動機能は,術後2週および3週時に下肢筋力(術側および非術側の股関節外転,膝関節伸展)と歩行能力,歩行距離を評価した。各調査項目は,χ二乗検定,Fisherの直接確率検定を用いて比較検討し,安定型群と不安定型群の筋力の改善パターンの違いをみるために2要因における二元配置分散分析を用いて解析した。なお,有意水準は危険率5%未満とした。【結果】術式は全例に観血的骨接合術が施行された。両群ともに手術翌日から全荷重を開始した。手術時間(53±21 vs.72±42,NS),術中出血量(14±22 vs.62±104,NP),術後在院日数(34±13 vs.31±9,NP),自宅退院率(73 vs.50,NP)には2群間で有意差を認めなかった。術後2週時において,安定型群の術側膝伸展筋力は,不安定型群と比べて有意に高値を示した(P<0.05)。また,両群ともに術後2週時と比べて術後3週時の膝伸展筋力が有意に高値であった(P<0.05)。術後3週時において,T杖歩行ないし独歩が可能となった割合は安定型群で73%であり,不安定型群の36%と比べて高い傾向にあった(P<0.1)。【結論】大腿骨転子部骨折の安定型骨折は不安定型骨折と比べて,歩行能力の改善が早い傾向にあった。安定型骨折において術後早期の膝伸展筋力が高い水準にあったことが,早期の歩行能力向上に影響していると考えられた。以上のことから,大腿骨転子部骨折の理学療法を進めるうえで,骨折型の評価を踏まえて治療プラグラムを実施することが必要と思われた。

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© 2016 日本理学療法士協会
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