理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-23-4
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腰椎手術患者の術前・術後の体幹筋トレーニングによる腹横筋,内・外腹斜筋の筋厚変化
藤川 寿史木村 玲央藤﨑 友輝竹下 直樹宮﨑 雅司井㞍 幸成大塚 章太郎榊間 春利
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抄録

【はじめに,目的】多くの研究が腰椎手術患者の術前・術後での下部体幹における背筋力と腹筋力の不均衡は術後の痛みや活動制限に関係していると報告している。そのため,ローカル筋(腹横筋や多裂筋など)やグローバル筋(腹直筋や外腹斜筋など)の活動を促進する体幹筋トレーニングは重要になる。しかし,腰椎術後リハビリテーションにおける適切な介入方法に関してはよく分かっていない。当院では腰椎手術前後から下部体幹の安定化を目的としたトレーニングを行っている。本研究の目的は,腰椎手術患者のDraw-in Ex,Bracing Ex,頭部挙上運動における腹横筋,内・外腹斜筋の筋厚を計測し,術前後の筋厚変化とトレーニングの有用性を検討することである。【方法】対象は腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性側弯症により腰椎手術(腰椎後方椎体固定術,椎弓形成術)を施行した11名(男性10名,女性1名,69.9±8.7歳)とした。術前,術後2日,術後7日における安静時とDraw-in Ex,Bracing Ex,頭部挙上運動時の腹横筋,内・外腹斜筋の筋厚を,超音波診断装置(東芝社製,NEMIO SSA-550A)を用いて測定した。測定姿位は仰臥位とし,プローブの位置は前腋窩線と臍部水平線の交点とした。術前に運動方法に関して十分練習を行い,過度な努力や痛みを伴わない範囲で運動を行うように指示し,安静時は呼気終末での筋厚を計測した。計測前に健常成人4名を対象にして検者内信頼性を級内相関係数(ICC)によって検討した結果,腹横筋0.888,内腹斜筋0.821,外腹斜筋0.721であり高い信頼性を得た。統計学的検定には反復測定による一元配置分散分析を用い,多重比較検定を実施し,有意水準は5%とした。【結果】各時期のトレーニング別の比較において,腹横筋筋厚は安静時と比較してDraw-in Ex,Bracing Ex,頭部拳上運動で高値を示し,Draw-in Exが最も筋厚が増加した。しかし,術後2日の腹横筋は安静時と比較して各トレーニングでの有意な筋厚増加を認めなかった。術前と術後の比較において,安静時の腹横筋筋厚は術前と比較して術後7日に有意に低値を示した。また,トレーニング時の腹横筋筋厚は術前と比較して術後に低下した。内・外腹斜筋の筋厚は術前と比較して術後2日に低値を示したが7日後には改善を示した。【結論】今回の結果より,術後の安静や創部痛などにより腹横筋や腹斜筋群に早期から筋萎縮が生じている可能性があり,特に腹横筋は腹斜筋群より術後の影響を受けやすいと考えられた。また,術後早期には一過性に神経・筋コントロール低下が生じている可能性があり,このような筋機能低下は腹斜筋群と比べて腹横筋のようなローカル筋で長期化することが示唆された。高齢者の腰椎手術後には合併症予防のために早期離床が重要であり,ベッド上でも抗重力筋の機能を維持・改善する必要がある。早期から腹横筋収縮を促進するDraw-in Exは術前後のトレーニングとして有用であることが示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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