理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-41-2
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整形外科疾患を対象にした入院早期における転倒自己効力感の有用性
大谷 知浩臼田 滋
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抄録

【はじめに,目的】地域在住高齢者における転倒自己効力感をアウトカムにした報告では,生活空間などと関連していることが報告されている。しかしながら,入院患者を対象にした入院早期における報告は十分にされていない。そこで,今回は整形外科疾患を対象に入院早期における転倒自己効力感の有用性について,生活空間や健康関連Quality of life(QOL)などの評価指標も用いて検証した。【方法】対象は,整形外科に入院しリハビリテーションを実施している改訂長谷川式簡易知能評価スケールが20点以上の男性10名,女性10名(平均年齢73.2±10.6歳)であった。疾患別では,下肢骨折が3名,脊椎圧迫骨折が8名,上肢骨折が3名,変形性脊椎症などその他が6名であった。転倒を原因に受傷した者は12名であった。調査項目は,入院前Life-space assessment(LSA),入院後に歩行が10m以上見守りで行えた時点での転倒自己効力感(Falls Efficacy Scale-International;FES-I),病棟での生活空間(Nursing home life-space diameter;NHLSD),健康関連QOL(SF-8)の身体的サマリースコア(Physical component summary;PCS)と精神的サマリースコア(Mental component summary;MCS),意欲(Vitality Index;VI),Timed up and go test(TUG)とした。尚,歩行の条件として歩行補助具の種類や有無については問わないこととした。また,SF-8の使用に際してはNPO法人健康医療評価研究機構による使用許可を得ている。統計解析は,FES-Iとその他の調査項目の関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。【結果】各調査項目の中央値(範囲)は,FES-Iが45.5点(19-63),NHLSDが30.0点(12-92),VIが10.0点(9-10)であった。平均値±標準偏差は,入院前LSAが58.8±28.9点,PCSが34.6±13.4,MCSが45.9±8.5,TUGが18.6±9.6秒であった。また,入院日から10m以上の歩行が可能になるまでの平均日数は19.1±16.0日であった。FES-Iと入院前LSA,NHLSD,PCS,MCS,VI,TUGの相関係数は,それぞれ-0.62(p<0.01),-0.31,-0.47(p<0.05),-0.50(p<0.05),-0.24,0.43であった。【結論】FES-I得点が高い対象は,入院前の生活空間が狭く,健康関連QOLが低下している傾向にあった。この結果は,これまでの報告と同様であり,入院早期においてもFES-Iの使用は有用である可能性が考えられた。しかし,対象者数は少なく横断的な調査であったため,その因果関係は明らかにされていない。今後,対象者数を増やし,入院早期の転倒自己効力感の有用性について更なる検討が必要である。

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