理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-41-4
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変形性股関節症に対するホームエクササイズの継続率に対する一考察
~ゆうきプログラムに着目して~
春口 幸太郎井元 淳林 和生大谷内 輝夫
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抄録

【はじめに,目的】我々は当院で行っているゆうきプログラムを取り入れたHome-Exercise(以下,HE)の短期効果について第49回理学療法学術大会で発表した。本研究ではHEの頻度に着目し,HEの継続率の違いによる症状の変化を検証することを目的とした。【方法】対象は変形性股関節症の新規患者24例(女性のみ,62.4±9.4歳)とした。評価項目は,基本属性,Numeric Rating Scale(以下,NRS),日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下,股関節JOAスコア),歩行速度,歩行率,MOS Short-Form 36-Item Health Survey(以下,SF-36v2)とし,HE施行前とHE施行3ヶ月目(以下,3ヶ月目)で比較した。なお,両側例群では,疼痛の強い関節を評価肢とした。HE指導では,先行研究に準じ,症例ごとに負荷量を設定して指導し,体調が優れない日は中止するよう伝えた。対象者にHEチェックシートを配布し,HEができた日,できなかった日等を理由とともに記載してもらい,HE開始から3ヶ月目までの継続率を算出した。必要に応じて,電話連絡や郵送によるチェックシートの確認を行った。畑山らの報告で示された継続率87.1±15.9%を参考に,HEの継続率90%以上を高継続群,90%未満を低継続率群と設定した。統計解析にはエクセル統計2012を使用し,Mann-WhitneyのU検定及びWilcoxonの符号順位検定を行った。【結果】HEの継続率は81±26%であった。HE施行前と3ヶ月目での2群間の比較では,3ヶ月目のNRSのみ有意差を認め,高継続群で改善が見られた(p<0.05)。SF-36v2では活力,日常生活機能(精神)の項目において有意差を認め,高継続群で改善が見られた(p<0.05)。高継続群と低継続群それぞれでのHE施行前と3ヶ月目との比較では,高継続群のNRS(p<0.01)と股関節JOAスコア(p<0.05)に有意差を認め,高継続群の方で改善が見られた。SF-36v2の各指標では,高継続群は体の痛み,活力,日常生活機能(精神),心の健康,低継続群は身体機能に有意差を認め,高継続群でより改善を示した(p<0.05)。【結論】HEの高継続群において疼痛に関連した評価項目の改善が認められた。HEの継続率が機能障害の改善度に関与することが部分的に立証され,HEの継続率が高い方がより機能障害の改善やQOLの向上を図れることが示唆された。葛山らは,HEを継続させるには,患者が自らの状態やHEの効果を理解・実感し,自らの意思でトレーニングを行うことが必要と述べている。したがって,本研究では,対象者と電話やチェックリストの郵送など定期的に連絡を取り,症状の確認や意欲の持続を図ったことが有益だったと推測される。また,手術をできるだけ延期・回避したいとの意欲が高いこともモチベーションの維持につながったと考える。本研究は,短期間での継続率であるため,今後は長期的な継続率の動向をみていく必要がある。

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© 2016 日本理学療法士協会
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