理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-KS-03-1
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口述演題
低強度・筋短縮位での等張性トレーニングの筋力増強効果
筋束長特異性に着目したランダム化比較試験
田中 浩基池添 冬芽中村 雅俊簗瀬 康藤田 康介本村 芳樹草野 拳荒木 浩二郎梅原 潤佐伯 純弥森下 勝行市橋 則明
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抄録

【はじめに,目的】高強度等尺性トレーニングによって,筋力は関節角度特異的に向上することが報告されている。しかし,近年我々は低強度かつ筋短縮位での等尺性トレーニングでは筋伸張位での筋力が向上する,つまり低強度のトレーニングでは関節角度特異性に筋力は向上しないことを報告した。この理由として,筋短縮位で低強度の筋力発揮したときの筋束長と筋伸長位で最大筋力を発揮したときの筋束長は同等となることから,低強度・筋短縮位で等尺性トレーニングを行うと筋束長特異的に筋伸長位での最大筋力が向上すると考えた。しかし,臨床でよく行われる等張性トレーニングにおいても同様の結果が得られるのかは明らかではない。そこで本研究は筋短縮位・低強度での等張性トレーニングを実施し,筋力向上効果が筋束長特異性にみられるのかについて検討した。【方法】対象は健常若年男性16名(24.1±2.46歳)とし,ランダムに介入群8名と対照群8名に振り分けた。介入群には週3回,4週間の足関節底屈の等張性トレーニングを行い,対照群には介入は行わなかった。等張性トレーニングは足関節底屈15~30度の角度範囲の筋短縮位で求心性収縮相を3秒とした運動を行った。運動強度は最大等張性筋力の20%の低強度とし,反復回数は1セット20回として3セット行った。介入前後に筋力測定器(BIODEX社製Biodex System4)を用いて最大等尺性足底屈筋力を足関節背屈15度,底背屈0度,底屈15度,底屈30度の4肢位で測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて介入前後に安静時の腓腹筋(内側・外側頭),ヒラメ筋の筋厚および筋束長を測定した。さらに最大筋力測定時及びトレーニング条件における腓腹筋の筋束長を測定した。統計は対応のあるt検定を用いて介入前後の各関節角度における最大等尺性筋力,安静時の筋厚及び筋束長を比較した。【結果】介入群において,底屈15~30度の筋短縮位トレーニング介入後,底背屈0度,底屈15度,底屈30度における最大筋力には変化がみられず,背屈15度の筋力のみ有意な増加が認められた。対照群は全ての関節角度で筋力の変化は認められなかった。安静時の筋厚及び筋束長は介入前後で有意差はなく,介入による筋の形態的な変化は認められなかった。トレーニング時の腓腹筋の平均筋束長は3.54±0.66cm,最大等尺性筋力発揮時の筋束長は背屈15度で3.71±1.03cm,0度で3.18±0.82cm,底屈15度で2.72±0.67cm,底屈30度で2.43±0.50cmであり,トレーニング時の筋束長は背屈15度での最大筋力発揮時の筋束長と最も近い値を示した。【結論】筋短縮位(足関節底屈位)での低強度等張性トレーニングによって筋伸長位(足関節背屈位)での筋力が向上し,トレーニングを実施した関節角度ではなく,筋束長特異性に筋力向上効果が得られることが示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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