理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-KS-08-4
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口述演題
外乱負荷に対する足趾筋を含めた下肢筋群の反応順序性に関する研究
佐々木 雄太隈元 庸夫髙栁 清美
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キーワード: 外乱刺激, 姿勢保持, 足部筋
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抄録

【はじめに,目的】動的姿勢保持機能と足趾の筋力,筋活動量の報告は多数みられる。また,支持基底面の急激な移動に伴う下肢筋群の筋活動の反応順序性を検討した報告も散見されるが,足趾筋について検討した報告は少ない。本研究は若年健常者を対象に支持基底面に対する外乱負荷における足趾筋を含めた下肢筋群の筋活動の反応順序性を明確とすることで転倒予防などにおける足趾へのアプローチの科学的根拠を得ることを目的とする。【方法】若年健常男性20名(年齢25.0±4.5歳,身長171.3±6.5cm,体重65.6±10.9kg,いずれも平均±標準偏差)を対象とした。外乱負荷は平衡機能評価機器(EquiTest,NeuroCom社製)におけるMotor Control Testを刺激として用いた。これは立位で床面が前後方向に水平移動する外乱負荷刺激装置で,水平移動量は身長の3.1%に自動補正される。刺激に対する筋活動の反応性測定には平衡機能評価機器と同期させた表面筋電計(Tele Myo DTS,Noraxon社製)を用いた。前脛骨筋,腓腹筋内側頭,大腿直筋,大腿二頭筋,腹直筋,大殿筋,母趾外転筋,足趾伸筋群を導出筋とした。筋電解析ソフトウェア(MyoResearch Master,Noraxon社製)にて10~500 Hzのバンドパスフィルター,心電図ノイズ低減の後,全波整流化し波形解析した。刺激前100ms間の整流波形の最大値を確認。刺激後にこの値を超えた時点の潜時(pre motor time;PMT)を筋活動の開始とした。支持基底面が後方と前方に動いた際の各筋のPMTについてHolmの多重比較検定による比較検討を行い,有意水準は5%とした。【結果】床面後方移動の刺激におけるPMTは,母趾外転筋が95.0ms,足趾伸筋群が77.0ms,腓腹筋が84.0ms,大腿二頭筋が116.4ms,大殿筋が136.7msとなった。母趾外転筋と大腿二頭筋・大殿筋,足趾伸筋群と大腿二頭筋・大殿筋,腓腹筋と大腿二頭筋・大殿筋の間に有意な差がみられ,足底に近い筋である母趾外転筋,足趾伸筋群,腓腹筋のほうが足底より遠い筋である大腿二頭筋,大殿筋よりも早期な筋活動の反応順序性が確認された。床面前方移動の刺激におけるPMTは,母趾外転筋が84.7ms,足趾伸筋群が94.7ms,前脛骨筋が87.4ms,大腿直筋が101.7ms,腹直筋が134.0msとなった。足趾伸筋群と腹直筋,前脛骨筋と大腿直筋・腹直筋,大腿直筋と腹直筋の間に有意な差がみられ,足底に近い筋である足趾伸筋群や前脛骨筋のほうが足底より遠い筋よりも早期な筋活動の反応順序性が確認された。【結論】動的姿勢制御における足趾筋群の筋活動の反応順序性は前脛骨筋や腓腹筋と同様に重要である可能性が示唆された。本結果は高齢者との比較検討に繋がる基礎的な知見になると考える。

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© 2016 日本理学療法士協会
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