理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-08-6
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軽負荷反復運動課題によるPost exercise depression期間中の皮質内抑制回路の変化
宮口 翔太小島 翔小丹 晋一中川 晶樹佐々木 亮樹田巻 弘之大西 秀明
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抄録

【はじめに,目的】リハビリテーション分野において,軽負荷の反復運動は関節可動域の改善や運動学習の促進,脳卒中患者の随意運動促通などを目的に幅広く用いられている。先行研究では,軽負荷反復運動後に一次運動野の興奮性が一過性に低下する現象(post exercise depression;PED)が報告されている(Teo, et al., 2012;Miyaguchi, et al., 2013.)。しかしPEDのメカニズムの詳細は未だ不明である。そこで本研究はPED期間中の皮質内抑制回路の変化を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人8名(23.8±2.9歳)とし,2 Hzの右示指外転運動を6分間遂行した。収縮強度は最大随意収縮の10%とした。経頭蓋磁気刺激により左一次運動野手指領域を刺激し,右第一背側骨間筋から単発刺激による運動誘発電位(single MEP)および二連発磁気刺激による短間隔皮質内抑制(SICI)を計測した。SICI計測時の条件刺激強度は運動時運動閾値の80%とし,刺激間隔は2 msとした。運動前におけるsingle MEP計測の磁気刺激強度およびSICIの試験刺激強度は安静時運動閾値(RMT)の110%,115%,120%,125%,130%とし,運動後の各磁気刺激強度は130%RMTとした。運動前後におけるSICIの比較にはsingle MEPの値が運動前後で同程度となる試験刺激強度で計測された値を対象とした。single MEPおよびSICIは運動前,運動後1-2分,運動後3-4分に計測し,各12波形の平均値を算出した。運動前後のsingle MEPの比較には一元配置分散分析を用いた。事後検定にはBonferroni法を用いた。またsingle MEPに対するSICIの比較には対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%とした。【結果】運動前後に130%RMT強度により計測されたsingle MEPの値(平均値±標準誤差)は,一元配置分散分析の結果,時間要因に主効果が認められ(F(2,15)=4.177,p<0.05),1.52±0.01 mV(運動前),1.10±0.23 mV(運動後1-2分),1.34±0.17 mV(運動後3-4分)となり,運動前に比べ運動後1-2分において有意に低下した(p<0.05)。SICIの値は,0.77±0.22 mV(運動前),0.57±0.19 mV(運動後1-2分),0.66±0.22 mV(運動後3-4分)となり,いずれもsingle MEPに比べSICIの値が有意に低値となり(運動前および運動後3-4分;p<0.05,運動後1-2分;p<0.01),運動前後でSICIに変化は認められなかった。【結論】軽負荷反復運動課題によるPED期間中にSICIは変化しないことが明らかになった。

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© 2016 日本理学療法士協会
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