理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-12-4
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スリング伏臥位ブリッジ運動における振動刺激の影響
小谷 征輝山本 敬三
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抄録

【はじめに,目的】伏臥位ブリッジ運動は,腰部安定化・体幹強化を目的としたトレーニングによく選択される。腰部安定化トレーニングは,腰痛の治療・予防,運動パフォーマンス向上を目的に行われ,さらに不安定な床面を利用した場合は,安定した床面と比較して,腰部安定化筋群を効果的にトレーニングできる可能性が示された(2005;Anderson, 2012, Behm)。近年,スリング装置と振動刺激装置を併用した治療・トレーニング方法が注目されてきた(2009;Kirkesola)。振動刺激は,より不安定な環境をもたらすが,臨床的に遂行する運動の困難度が減少し,疼痛軽減,筋機能が向上するという報告がある(1997;Hodges, 2009;Kirkesola, 2011;Muceli)。しかし,振動刺激強度は,臨床経験により決定されており,統一されていない。本研究の目的は,スリング伏臥位ブリッジ運動における振動刺激強度の違いをバイオメカニクス的観点から,振動刺激強度決定の一助を示すことである。【方法】運動課題は,伏臥位ブリッジに両股関節外転運動を付加した動的伏臥位ブリッジとした。ブリッジ姿勢保持後,5秒間で股関節最大外転を行わせた。対象は,健常男性10名(年齢;25.1±3.05歳,身長;170.6±5.6cm,体重;65.0±7.1kg)とした。振動刺激は振動刺激装置を使用し,振動条件は振動なし,振幅小30・15Hz,振幅大30・15Hzの全5条件とした(NV,L15,L30,H15,H30)。実験は,3次元光学式動作分析装置(MAC3D system,Motion Analysis Inc.)と筋電計(EMG;BioLog DL-5000,S&ME Inc.)を同期させて計測した。関節角度(ROM)として体幹の屈曲-伸展,側屈,回旋および股関節屈曲-伸展の平均角度・標準偏差,股関節外転可動域を算出した。EMGは,腹直筋,内腹斜筋,外腹斜筋,大腿直筋,脊柱起立筋を計測対象とした。各運動課題終了直後に,Visual Analog Scale(VAS)を用いて主観的困難度を評価した。ROMおよびEMGは,運動遂行中の間3秒間の平均および標準偏差(SD),股関節外転角度は外転運動の最大角度から外転開始角度を減算した値を算出した。統計分析では,ROMについてはBonferroni post hoc testを使用した。VAS,EMGについてはKruskal-Wallis testの後,Steel-Dwass testを使用した。有意水準はP<.05とした。【結果】ROMは振動条件による統計学的な違いは認められなかった。しかし,体幹回旋角度のSD値において,NVと比較してH30,L30,H15,L15に有意な減少(P<.05)を認めた。また,股関節外転可動域では,NVと比較してH30,H15で有意な増加(P<.05)を認めた。EMGは,NVと比較して振動刺激により有意な減少が認められた。【結論】VASと体幹回旋のSD値の減少に関連があることが示唆された。また,EMGでは振動を与えることで筋活動の減弱が認められ,姿勢保持が容易に行えていることが示された。特に振幅大が,姿勢保持に補助的に働くことが示された。

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