理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-22-2
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ターニケットによる駆血後の下肢への非荷重が骨格筋におよぼす影響
―ラットを用いた実験的研究―
佐藤 勇太小野 武也石倉 英樹相原 一貴松本 智博薬本 茉奈田坂 厚志梅井 凡子積山 和加子沖 貞明
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キーワード: 筋萎縮, 駆血, 後肢懸垂
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抄録

【はじめに,目的】ターニケットによる駆血(以下,駆血)は,無血野の確保や術中出血量の抑制のために用いられるが,筋萎縮を生じる。また,下肢への非荷重や関節固定などの不活動は,筋萎縮を惹起する。駆血は関節固定を組み合わせた場合,駆血のみを行った場合と比較して筋萎縮が増悪することが報告されている。しかし,駆血と下肢への非荷重を組み合わせた場合に筋萎縮が増悪するかどうかは明らかにされていない。本研究の目的は,駆血と下肢への非荷重を組み合わせた場合に生じる筋萎縮が,駆血や下肢への非荷重を単独で行った場合と比較して増悪するのかを明らかにすることである。【方法】対象は10週齢のWistar系雌ラット25匹とした。実験期間は1週間である。群分けは,対照群,下肢への非荷重を再現する動物実験モデルである後肢懸垂を行う懸垂群,駆血を行う駆血群,駆血後に後肢懸垂を行う駆血懸垂群の4群とした。評価項目は,実験最終日におけるヒラメ筋の相対筋湿重量と最大強縮張力,筋線維短径とした。すべての処置は麻酔下で行った。実験開始日,駆血はヒト指用ターニケットカフを使用し,右大腿部に対して300mmHgの駆血圧で90分間行った。後肢懸垂はキルシュナー鋼線をラット尾部に刺入し,ナスカンフックを介し,飼育ケージの天井金網に掛けて行った。実験最終日,最大強縮張力の測定は右ヒラメ筋を摘出し,マグヌス管内で電気刺激を行うことで実施した。その後,相対筋湿重量は筋湿重量を計測し,体重で除することで算出した。H&E染色後,筋線維短径の測定は顕微鏡デジタルカメラを用いて撮影し,画像解析ソフトを用いて行った。各群における各評価項目の比較のための統計処理は,対応のない一元配置分散分析もしくはKruskal-Wallis検定を実施した。その後の多重比較はTukey法もしくはSteel-Dwass法を用いて実施した。すべての統計処理は危険率5%未満をもって有意差ありと判定した。【結果】相対筋湿重量は,すべての群間に有意差がなかったが,駆血懸垂群は対照群と比較して増加する傾向があった。最大強縮張力について,駆血懸垂群は,対照群と駆血群,および懸垂群と比較して有意に低下した。懸垂群と駆血群の最大強縮張力は,対照群と比較して低下する傾向があった。筋線維短径について,駆血群と懸垂群,および駆血懸垂群は,対照群と比較して有意に減少した。【結論】ヒラメ筋の筋萎縮や筋収縮力の低下は,駆血と下肢への非荷重を組み合わせた場合,これらを単独で実施した場合と比較して増悪することが明らかになった。駆血懸垂群は浮腫が生じたことも推測された。駆血は筋萎縮や浮腫を生じ,後肢懸垂はヒラメ筋の筋活動の低下や筋萎縮を生じる。これにより,駆血後の下肢への非荷重は,筋萎縮や筋収縮力の低下を増悪させ,駆血と筋活動の低下に伴う筋ポンプ作用の低下により,浮腫を生じたと示唆される。

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© 2016 日本理学療法士協会
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