理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-31-2
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加速度センサを用いた立ち上がり動作分析における滑らかさの指標
―平均情報量,RMS,Jerk costの有用性の比較検討―
嶋村 剛史森口 晃一羽田 清貴岡澤 和哉加藤 浩
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抄録

【はじめに,目的】加速度センサを用いた分析は装着が容易で計測場所の制限もなく,臨床において簡便な評価ツールの1つとして知られている。近年では動揺性や滑らかさといった動作の質に関する研究は多数なされているが,立ち上がり動作に関しての研究は少ない。そこで,本研究の目的は加速度センサを用いた立ち上がり動作分析における滑らかさの評価として,これまでに報告されてきた代表的な平均情報量,RMS,Jerk costのどの指標が最も臨床応用するのに有用であるかを比較検討することである。【方法】対象は健常成人男性17名(20.5±0.5歳),加速度データの計測には9軸ワイヤレスモーションセンサ(Logical product社製)を用い,被検者の第3腰椎棘突起部に位置するように固定用バンドで体幹に巻きつけた。サンプリング周波数は100Hzとした。立ち上がり動作を2秒に設定(着座動作も同様に設定)し,メトロノームを用いて立ち上がり動作を各8回ずつ繰り返し測定した。測定前には設定した動作の練習を十分に行った。測定した立ち上がり動作の最初2回,最後1回を除いた5回を解析対象とした。加速度センサより得られる前額軸の角速度データを1階積分して得られる角度データを用いて加速度センサ本体の経時的な傾きを算出し,補正後のデータを用いて左右,鉛直,前後,三軸合成の平均情報量(エントロピー),二乗平均平方根(Root Mean Square:RMS),躍度の二乗の総和(Jerk cost)を各々算出し比較した。エントロピーはハニングの窓関数を用いて高速フーリエ変換によって時系列スペクトルを求め,第1成分を除く20Hzまでの成分を正規化したものから算出した。統計学的分析にはIBM SPSS Statistics 19(日本IBM社製)を使用し,Pearsonの積率相関係数(r)とSpeamanの順位相関係数(ρ)を用いて検討した。【結果】左右方向においてRMSとエントロピー間で負の相関を認めた(ρ=-0.62,p<0.01)。鉛直方向において相関関係は認めなかった。前後方向においてJerk costとRMS間で正の相関を認め(r=0.56,p<0.05),RMSとエントロピー間で負の相関を認めた(r=-051,p<0.05)。三軸合成においてJerk costとRMS間で正の相関を認めた(r=0.56,p<0.05)。【結論】先行研究では滑らかさの指標としてRMSとエントロピーに正の相関があるという報告である。しかし,本研究では相反する結果となった。これは先行研究の動作は定常的な繰り返し動作の結果あり,極めて再現性が高い動作においては有効である。しかし,再現性が比較的低い繰り返し動作では有効な指標としては使用できない可能性が考えられる。Jerk costにおいては単純に加速度の変化量を捉えるため有効であるが,方向が一定しない動作において有効ではない可能性が考えられる。エントロピーにおいては高周波成分が動作の滑らかさに影響するので動作の周波数帯を把握し,考慮した解析が必要になると考える。つまり,動作に合わせた指標の検討が必要である。

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© 2016 日本理学療法士協会
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