理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-42-1
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両脚・片脚起立移行時の足圧分布中心の解析
久保 雅義
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抄録

【はじめに,目的】高齢者のバランス不良は加齢に伴う筋力の低下と関連付けられることが多く,転倒予防策にも筋力強化がプログラムとして取り入れられている。しかし,筋力がバランス能力に寄与するメカニズムについては必ずしも明確にされていない。バランスの評価の一つである足圧分布中心(COP)はその周波数帯により異なるバランスメカニズムを反映しているとされている。今回の研究の目的は,片脚起立のバランスメカニズムの理解を助けるために,健常被検者が,安定した両脚支持期からより不安定な片脚支持期へと移行する際のバランスメカニズムの変化をCOPの周波数分析することにある。【方法】健常大学生を被検者として,床反力計上での閉眼での片脚起立を行わせ,両脚での安静立位から片脚起立そしてバランスをくずすまでの足圧分布中心(COP)の変化を1000Hzのサンプリングレートで記録した。得られたCOPの時系列データを左右方向(COPx)・前後方向(COPy)に分け,さらに信号の非定常性を取り除くため隣り合うデータポイントの差分のデータへと変換した(dCOPx,dCOPy)。それぞれの差分データに対してhaarをウェーブレットとして,近似(A5)と詳細(D1…D5)へと離散ウェーブレット変換を行った。A5およびD1…D5に対して,時系列上で分散の変化するポイントを検知した。信号処理にはMATLAB(2015b,Mathworks)をもちいた。両脚支持期と移行部そして片脚支持期含む3秒間を解析区間とし,移行前後の区間でのA5,D1…D5の分散の変化を対応のあるt検定をもちいて解析した。【結果】COPx,COPyともに両脚立位から片脚立位に移行することにより,ほとんど振動しない状態からより大きな振動状態へと移行した。左右方向のdCOPxでは,より低い周波数成分を反映しているA5が片脚起立への移行を期にCOPxの振動に呼応してその振幅は有意に増加するが,分散には有意な変化はない。これに対して,より高い周波数成分を反映している成分,例えばD1,D2では移行を期に分散が有意に減少し(p<0.05),その後はCOPの変位に呼応する変化はみられない。前後方向のdCOPyの振る舞いも同様で,片脚立位への移行にともない,低周波成分のA5がCOPyの振幅変化に呼応する振幅の変化をするのに対して,高い周波数成分はその分散が有意に減少した(p<0.05)。【結論】両脚立位から片脚立位への移行により変化する支持規定面であり,左右方向のdCOPxの変化は支持基底面の減少とそれに対応するバランスメカニズムの変化を反映していると考えられる。dCOPyは直接支持基底面の変化をうけていないにもかかわらず同様の変化を示したことは,前後方向のバランス制御が左右方向のバランス制御と独立できないことを示唆している。

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© 2016 日本理学療法士協会
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